嗅覚障害〔きゅうかくしょうがい〕 家庭の医学

[原因][症状]
 以前にくらべ、においがわからないといううったえで耳鼻科を受診する人がふえています。罹患率に性差はありませんが、女性にとっては悩みが深刻で、くさった物がかぎ分けられない、風味がわからず料理の味付けが変わってしまったなどさまざまなうったえがあります。
 さきにも述べたように、嗅覚障害と一口にいってもいろいろなタイプの障害がありますが、多くは嗅覚減退か嗅覚脱失です。その原因の多くは、慢性副鼻腔炎により粘膜がはれてしまい、あるいは鼻茸(はなたけ)にさえぎられて吸った空気が嗅覚のセンサーがある嗅粘膜まで到達しないために起こります。また、感冒(かぜ)のウイルスが嗅粘膜を壊滅的に破壊し、嗅覚脱失をきたすこともあります。そのほか、交通外傷などで嗅粘膜から脳に至る神経の束が切断されると嗅覚脱失を生じます。
 なお、通常でも60歳を過ぎると嗅覚が減退することがわかっており、またアルツハイマー病パーキンソン病でも嗅覚減退が生じます。

[診断][治療]
 障害の程度は、耳鼻科で施行している基準嗅力検査という検査でわかります。これは5種類のそれぞれ濃度が異なるにおいを実際にかいで、どのくらいの濃さのにおいがわかるかという検査です。このほかに静脈性嗅覚検査といい、ビタミン薬の一種であるアリナミンを静脈注射したあと、何秒でアリナミン臭がするかを測定するほか、嗅覚同定能力研究用カードキット、オープンエッセンス(OE)などがあります。これらの検査と鼻腔内の所見、さらにはX線検査などで原因が特定されることが多いようです。
 治療は、原因となる副鼻腔炎などがあればそれをしっかりと治療(手術も含む)することです。副腎皮質ステロイド薬の点鼻や漢方薬、嗅覚リハビリも有効です。

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