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目の網膜の中心部にあり、物を見るのに重要な役割を果たす「黄斑」が、加齢により傷むのが加齢黄斑変性(AMD)だ。2008年以降、注射薬による新たな治療法が導入され、一部の患者では症状の改善が期待できるようになった。日本大学病院(東京都千代田区)アイセンターの島田宏之客員教授に聞いた。
▽視野の中心部が欠ける
光は網膜で感知され、神経信号として脳に伝わる。AMDでは網膜の中心部にある黄斑に障害が起こるため網膜の機能が果たせなくなる。50歳以上の1.3%にみられ、国内患者数は推計69万人。加齢、喫煙、遺伝などが発症に関与するとされる。「片方の目がAMDにかかると、もう片方の目が罹患(りかん)するリスクが20倍に高まります」と島田医師。
滲出(しんしゅつ)型と萎縮型という二つのタイプがある。全体の9割を占める滲出型では網膜の後ろに異常な血管ができ、むくみや出血が生じて、物がゆがんで見える、視野の中心部が欠けて暗く見える、視力の低下といった症状が表れる。
視力は月単位の速さで低下し、患者は「本や新聞の読みたいところが見えない」「道で知人と会っても相手の顔が分からない」といった悩みを抱えているという。進行すると日常生活への影響は大きく、視覚障害の原因の第4位となっている。一方、萎縮型の進行は緩やかだ。
▽治療で症状改善も
滲出型AMDに対して、約10年前に「抗VEGF(血管内皮増殖因子)療法」という治療法が登場し、症状の改善が期待できるようになった。異常な血管をつくるVEGFの働きを阻害する治療で、現在主に使われているのはラニビズマブ、アフリベルセプトという薬。ブロルシズマブという新薬が承認申請段階にある。ラニビズマブ、アフリベルセプトは最初は月1回の注射を3回行い、その後は病状に応じて1カ月~数カ月に1回の頻度で繰り返す。
病気の進行度にもよるが、「見え方のゆがみが減少した」「視野の中心が明るくなった」といった効果を実感できることが多いという。まれに、注射した目に細菌が入って炎症が起きたり(眼内炎)、別の副作用として脳卒中を発症したりすることがある。根本治療ではないことや医療費の患者負担が1回約5万円(3割負担の場合)と高額であることも課題だ。
将来的には、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いて網膜細胞を再生する手法が、根治につながる治療法として期待されているという。(メディカルトリビューン=時事)
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