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胃の悪性腫瘍の一つに、粘膜に発生する「胃マルトリンパ腫」がある。悪性度の低いリンパ腫で、その発症には胃がんの原因にもなっているヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が深く関わることが知られている。東京大学医学部付属病院(東京都文京区)消化器内科の辻陽介医師に聞いた。
▽悪性度は低く進行が遅い
悪性リンパ腫は、細菌やウイルスなどを攻撃するリンパ球ががん化する血液のがんだ。しかし、その種類は70種類以上に及び、がんの性質はおのおの異なる。
マルトリンパ腫は、リンパ節以外に見られる悪性リンパ腫。胃や大腸、肺、目の組織、甲状腺などに発症し、中でも胃に発生するマルトリンパ腫が多い。辻医師は「悪性リンパ腫というと、がんが全身に及ぶイメージを持つ人が多いですが、胃マルトリンパ腫は普通、胃の粘膜に関連するリンパ組織にのみ起こります」と説明する。
胃マルトリンパ腫は、感染症やそれに伴う炎症が原因の一つといわれており、国内では患者の90%でピロリ菌の感染があると報告されている。自覚症状はほとんどなく、「胃炎や胃潰瘍などの疑いで検査をしたり、検診で胃の内視鏡検査を受けたりした際に偶然発見されることが多い」と辻医師。リンパ腫としては悪性度が低く、進行が緩やかなのが特徴だ。
▽5~8割は除菌療法が有効
胃マルトリンパ腫が胃にとどまり、ピロリ菌が陽性の患者に、経口の抗生物質を服用する除菌療法が第一選択となる。除菌できた人の50~80%は治癒するという。一方、除菌できなかった人、またピロリ菌陰性例でも、放射線療法で90%以上が治療可能であり、その後の経過は良好である。
辻医師は「胃以外にもマルトリンパ腫が進展している進行例に対しては、消化器内科と血液内科が連携し、分子標的薬であるリツキシマブなどを用いてがん化学療法を行います。自覚症状がない場合には経過観察となることもあります」と話す。
「悪性リンパ腫の一種と聞くと、過度に心配する人も少なくありません。しかし、腫瘍が胃にとどまっていることも多く、高い治療効果が得られるので、専門医と相談して治療をきちんと受けましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)
(2019/12/02 07:00)
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