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手のひらや足の裏に膿(うみ)がたまった水膨れが多発する「掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症」。人目に付く手に病変が表れ、足に膿疱が多発すると痛くて歩けないなど日常生活に支障を来す。この病気の専門外来を設ける聖母病院(東京都新宿区)皮膚科の小林里実部長は「患者ごとに発症や悪化の原因を突き止めて取り除けば、症状は改善します」と話す。
▽骨・関節にも炎症
掌蹠膿疱症の国内患者数は推定約13万6000人で、喫煙者、中年以降の女性に多い。手足の皮膚は、膿疱が多発し、皮膚の皮がむけてガサガサになる。「患者の10~30%は、鎖骨周辺、背骨などの骨や関節にも炎症が生じます。呼吸をするだけで痛みが出たり、ベッドから起き上がれなかったりする例もあります」と小林部長。
原因ははっきりと分かっていないが、「へんとう炎、歯周病など、もともと体内に存在する細菌による慢性的な炎症(感染病巣)が関わっている例が多く見られます」と説明する。皮膚にできる膿疱の中には細菌はいないため、細菌そのものが飛び火するわけではなく、「人にもうつりません」(小林部長)。体のどこかに感染病巣が潜んでいることで、体内で外敵と戦う免疫システムが誤作動し、皮膚や関節に炎症が生じると推測されている。別の要素として重要なのは喫煙で、炎症を促進させるという。
▽新たな治療の選択肢が登場
同病院の皮膚科では、初回と2回目の診察で血液検査、画像検査、歯科への検査依頼などを行って感染病巣の有無を詳細に調べる。見つかれば軽症や無症状でも、耳鼻咽喉科や歯科などと連携して治療する方針だ。小林部長は「へんとうの摘出や歯周病の治療で、60~80%の患者は皮膚症状が改善します」と話す。
新しい治療法として、2018年11月からグセルクマブという注射剤が使えるようになった。炎症に関わる「IL―23」という物質に結合してその働きを妨げ、炎症を抑える作用がある。小林部長によると、〔1〕感染病巣を治療しても皮膚症状が残る〔2〕骨や関節の症状で生活に支障がある〔3〕感染病巣が見つからない―などの患者が新薬の対象となる。
使い始めると、3~6カ月後から症状がゆっくり改善する。副作用は注射した箇所の赤みなどで、小林部長は「治癒可能な病気です。諦めず治療を受けましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/03/15 09:00)
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