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70代を中心に高齢者に多い皮膚疾患の一つに乳房外パジェット病がある。かゆみを伴う赤くじゅくじゅくした湿疹のようなものが、主に陰部や脇の下に生じる。症状そのものはありふれているが、皮膚がんの一種だ。兵庫県立丹波医療センター(兵庫県丹波市)皮膚科の村田洋三医師は「自己判断による放置は禁物です」と話す。
大したことない、見せにくいなどと思わず、違和感があれば受診を
▽放置すれば進行も
乳房外パジェット病は、主に肛門の周囲や、男性では陰茎や陰嚢(いんのう)、女性では陰唇などに湿疹のような赤い斑が生じる。多くはかゆみがあり、分泌物を伴いじゅくじゅくすることもある。はっきりした原因は分かっていないが、汗を作る器官の細胞ががん化したものと考えられている。
初期には、がん細胞は表皮の中にとどまっているが、進行すると赤みの範囲が少しずつ広がっていくとともに真皮まで入り込む。やがて近くのリンパ節へ、さらには臓器に転移し、命に関わることになるという。
「見た目から単なる湿疹ではないかとか、生じやすい場所が陰部であるため真菌によるたむしではないかなどと思い込み、市販薬を塗ったり、放置したりするうちに病気が進行してしまうケースが少なくありません」と村田医師。
▽治療は手術や化学療法
乳房外パジェット病の治療は、手術による切除が基本となる。「病変の境界よりも1センチ外側から切除します。初期ほど切除の範囲は小さく、皮下脂肪層までの切除で済みますが、進行すると切除範囲が大きくなるし、病変が真皮まで進んでいるとさらに深く切除するので皮膚の再建手術の併用が必要になります」
リンパ節への転移が見つかった場合は、リンパ節を取り除く手術が行われる。だが、リンパ節への転移が広範囲に及んでいたり、臓器への転移が確認されたりした場合は、手術ではなく化学療法を主体とした治療が行われる。
手術後は、定期的な診察による経過観察が必要になる。まれに、手術後5年以上経過した後にも、外陰部や脇の下などに新たにがんが生じることがあるからだ。
「女性はもちろん男性も、陰部の病変は人に相談しにくいし、医療機関にも受診しにくいでしょう。しかし、痛みも苦痛もない、赤くなっているだけ、かゆいだけというありふれた症状なのに、命に関わる病気が隠れているかもしれません。違和感があれば皮膚科を受診してください」と村田医師は初期の受診の重要性を強調している。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/04/04 09:00)
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