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震えが生じることによって日常生活に支障を来す「本態性振戦」という病気がある。字を書くといった単純な動作をしている時や、箸やコップを持つなど姿勢を維持する時などに、手が震えるのが特徴で、病名はあまり知られていないが、中高年に多く見られる。川崎市立多摩病院(川崎市)神経内科の堀内正浩部長に聞いた。
▽加齢に伴い増加
「本態性」とは原因が分からないという意味で、「振戦」とは自分の意思とは関係なく起きるリズミカルな震えのこと。本態性振戦は、無意識に起こる原因不明の震えである。人口の1~3%に見られるという。
遺伝性の要素も関係しており、家族に本態性振戦の人や、震えが症状の一つであるパーキンソン病患者がいたりすると発症しやすい。40歳以上に多く発症し、加齢とともに増加する。
食事の際や会食でビールなどをつぐ時に手が震えるなど、生活の質が低下する。「患者さんからは『人に会うときに困る』という話をよく聞きます」(堀内部長)。症状が進むと、頭部が左右に小刻みに動いたり、声が震えたりすることもある。
パーキンソン病は主に安静時に震えが出現するのに対し、本態性振戦は安静時ではなく、動作をしているときや特定の姿勢を取った際に出現する。神経内科医であれば、パーキンソン病の他の症状の有無も考慮して本態性振戦を鑑別できる。患者が後にパーキンソン病を合併することもあるという。
▽飲み薬で治療可能
「震え以外に症状がないため、日常生活への支障の度合いが、治療を始めるかどうかのポイントになります」と堀内部長。仕事に支障を来したり、生活の質が低下したりしている場合には、高血圧や狭心症の治療によく用いられるベータ遮断薬という飲み薬で症状を抑える。
この薬は、手や首の筋肉に刺激を与えている交感神経を抑制する働きがあり、震えが弱まると考えられている。効果がなければ、抗てんかん薬のように筋肉の緊張を和らげる薬が使われる。
「根本的に治すのは難しい病気ですが、歩行などの運動機能に問題はなく、普段の生活ができなくなるほど症状が悪化する心配もありません」と堀内部長は説明する。ただし、本態性振戦やパーキンソン病の他にも震えが表れる病気はあるため、「震えが気になったら、神経内科を受診しましょう」とアドバイスする。 (メディカルトリビューン=時事)
(2020/04/11 09:00)
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