2021/03/29 05:00
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新型コロナウイルス感染症の拡大を食い止めるため、全国に拡大された緊急事態宣言が5月末まで延長されます。人との接触を8割減らすのを目標とした自粛生活に飽きてきてしまった人も多いのではないでしょうか。「重症化しているのは高齢者ばかりだし、1日くらいお出かけしてもいいよね」と考え始めている方もいらっしゃるかと思います。
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言発令後、初めての週末を迎えた宣言対象の4都市。普段に比べて人通りはまばら。(左上から時計回りに)東京・新宿、神奈川・横浜中華街、福岡・天神、大阪・道頓堀の街並み(4月11日)【時事】
◇長期的なデータなし
確かに新型コロナウイルス感染症は、ご高齢の方を除いた場合、死亡率や重症化率が低く、大多数の若年者にとって死に直結する疾患とは言えません。
しかし、発生して間もない新型コロナウイルス感染症には長期的なデータが存在しません。感染の後遺症や遅発性ウイルス感染=用語説明=に関しては未知な部分が多いです。
このことから考えると、ご高齢の方を除くと、リスクなどが分かっていないのが現状です。若い方も危機感をしっかり持ち、自粛を継続することが大切かと思います。
◇数年後に発症も
実際、数年以上の経過後に症状が表れる疾患は、いくつかあります。はしか(麻疹)ウイルスによる亜急性硬化性全脳炎は、その一例です。
この疾患は、感染後に麻疹ウイルスが脳に5~10年間潜伏しながら変異することで、発症します。症状としては記憶力の低下や歩行障害が挙げられます。現在は麻疹ワクチンの普及により、発症数は年間5~10例ですが、治療法は確立されておらず、予後が悪い疾患です。
身近な疾患では、単純ヘルペスウイルス感染症が挙げられるでしょうか。これは、口や性器の周囲に水疱ができる疾患ですが、症状が治まった後も、ウイルスは神経節に潜伏します。風邪や疲れ、ストレスによって体の抵抗力が低下した時などに潜在していたウイルスが再活性化し、症状が再燃します。
新型コロナウイルス感染症は、後遺症や遅発性ウイルス感染についての議論はなされていますが、解明には至っていません。ワクチン開発も難渋していますし、全ての人が感染をなるべく避けるべきです。
経済活動の急激な落ち込みや失業など問題が山積みですが、皆さんが自分自身の健康問題に関わるのだという認識を持ち、最低でも緊急事態宣言解除までは、外出自粛の徹底をお願いします。
【用語説明】遅発性ウイルス感染
ウイルス感染後、数年の潜伏期間を経て発症する感染様式。亜急性硬化性全脳炎を起こす変異型麻疹ウイルスや、進行性多巣性白質脳症を起こすJCウイルスが、この感染様式をとる。
参考文献
難病情報センター(2019). 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)(指定難病24).(閲覧日:2020年4月29日).
(2020/05/05 09:00)
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