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少し前、大手飲料メーカーが、飲料に食中毒を引き起こす恐れのある「セレウス菌」が混入していたとして、ペットボトル約170万本を自主回収した。消費者から「酸っぱい味がする」との連絡があり調査した結果、菌の混入が判明したという。その時はこの飲料による健康被害は確認されなかったものの、日本国内でのセレウス菌による食中毒は年間10~20件程度報告されており、食中毒全体の1%程度を占める。
セレウス菌が作る毒素により、食中毒症状が起こる
セレウス菌は土壌や水中、ほこりの中など、自然界に広く分布する細菌。生存が厳しい環境では芽胞という構造物を作り、90℃、60分の加熱でも生き残る。セレウス菌による食中毒には「嘔吐(おうと)型」と「下痢型」の2タイプがあるが、日本では嘔吐型が多い。
嘔吐型は、セレウス菌が食品中で毒素を作り出し、その食品を食べて30分から6時間程度で吐き気や嘔吐の症状が表れる。東京都健康安全研究センター食品微生物研究科の門間千枝主任研究員は「菌が作った毒素を食品と一緒に摂取するので、少量食べただけでも短時間で食中毒を起こしてしまいます。チャーハン、ピラフ、スパゲティ、焼きそばなどの油脂を使用した炭水化物の食品が原因となるケースがほとんど。嘔吐型の毒素は熱に非常に強いので、炭水化物を炒めるなどの加熱調理でも毒素は失活しないというデータが出されています」と話す。
一方の下痢型は、食品と共に摂取した菌が小腸内で増殖し、毒素を作ることで、下痢や腹痛を引き起こす。症状が出るまでの潜伏時間は8~16時間。原因となる食品は、食肉や野菜などだという。
▽小分けにして急速冷却
食中毒を防ぐポイントは、食品の保存方法だ。調理済みの食品を保存するときは、急速に冷却して冷蔵すること。「セレウス菌は15~30℃くらいで増殖します。一度に大量の米飯や麺類を調理後、室温のまま長く放置すると危険です。実際に、冷蔵も冷凍もしていなかった前日の残りご飯を、加熱すれば平気だろうとチャーハンなどにして、食中毒を起こすケースがあります」と門間主任研究員。
そして、調理した食品はなるべく小分けにして保存する。門間主任研究員は「大量の食品をひとまとめにすると、中心部の温度が下がるまでに時間がかかります。その間に菌や毒素が増えてしまう危険性があるので注意してください」と呼び掛けている。 (メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/06/21 09:00)
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