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現在でも死因の上位を占める肺炎は、気管支から肺内部にかけて炎症が広がり、呼吸不全に陥る。細菌やウイルスの感染が主な原因で、細菌によるものが多い。このため細菌性肺炎の上位を占める肺炎球菌という細菌のワクチンが開発され、重症化しやすい高齢者や乳幼児を対象に公費での接種が制度化されている。2020年からは、費用は自己負担だが、治療で免疫が低下したり、肺炎で持病が悪化する危険性の高かったりする成人にも対象を拡大。専門家は予防効果に期待を寄せている。
松本哲哉・国際医療福祉大学医学部主任教授
◇証明された効果
国際医療福祉大学医学部(千葉県)の松本哲哉主任教授(感染症学)は「ワクチン接種で65歳以上の高齢者や乳幼児の肺炎球菌性の肺炎や髄膜炎は減少しており、効果は証明されている」と話す。「これで『国も認めています』と堂々と勧められる」と期待する。
◇コロナで高まるリスク
新型コロナウイルスによる感染拡大が危惧される秋から冬にかけては、ウイルス性肺炎から細菌性肺炎を誘発する可能性が高まると予想されている。「新型コロナ感染によって細菌性肺炎を合併する可能性はインフルエンザに比べると低いと考えられる。しかし、呼吸器感染症や肺炎の感染リスクが例年以上に高まるのは確かで、ワクチン接種などできる対策はしておいた方が安全だ」。松本教授はこうアドバイスする。
接種が望ましいと考えられるのはどんなケースか。松本教授によると、①関節リウマチなど持病の治療で免疫が低下している②肺炎発病で重篤化しやすい慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患や循環器系の持病がある③人工透析を受けている―などの場合だ。「まずは主治医に相談して、『必要』と言われたときに適切なワクチンを接種してもらいたい」と松本教授は言う。
予防のためには人混みなどではマスクが必要
◇医療現場守る効果
肺炎の原因を臨床現場で識別することには、難しい面も伴う。特に、新型コロナの流行状況によっては、新型コロナかどうかを確認することが優先され、それだけ肺炎自体の治療が遅れてしまう可能性もある。
松本教授はそうした点などを踏まえ、「医療側にとっても、細菌感染による重症肺炎の患者が少なければ、それだけ医療スタッフの配置や病床の運用に余裕が生まれる。ワクチン接種には、医療体制を守る効果もあるのではないか」と話す。
病院などで掲示されているワクチン接種を勧めるポスター=ファイザー社提供=
◇重症化の防止にも
現在、国内で使用されているワクチンは2種類で、定期接種の対象は小児と高齢者ごとに1種。20年に適用が拡大されたのはそのうちの1種だ。ただ2種どちらも、肺炎球菌の一部の血清型に抗体を作らせる効果がある。肺炎球菌以外の細菌にはこのワクチンは効果がないが、肺炎球菌であっても血清型が異なれば効果は限定される。
松本教授は「このワクチンだけで完全に肺炎を予防することはできなくても、重症化防止まで考えれば十分に効果は期待できる」とした上で、「肺炎のリスクが高いと医師に言われた人は、ワクチン接種を前向きに考えてほしい」と呼び掛けている。(喜多宗太郎・鈴木豊)
(2020/10/11 06:00)
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