Dr.純子のメディカルサロン

コロナ不安に打ち勝つポジティブ心理学
~心の免疫力を高め、うつスパイラルを防ぐには~ 第58回

 緊急事態宣言が東京、埼玉、神奈川、千葉の4都県に発出され、大坂、愛知、福岡など7府県が追加されました。新型コロナの止まらぬ感染拡大に、不安を募らせる人たちが増えています。

 感染する不安、経済や雇用に対する不安、家族の健康に関する不安など、さまざまな不安があります。そうした不安や、生活環境の変化などのストレスが続いても、うつ気分に陥らないために、知っておきたいのが「ポジティビティ比」という言葉です。

 ◆「ポジ3」対「ネガ1」

 耳慣れない言葉かもしれません。この言葉は「ポジティブ心理学」という、心理学の中でも比較的新しい分野で使われるキーワードです。

 ポジティブ心理学は、身体的、精神的、社会的に良好な状態「ウェルビーイング」を高める、エビデンスに基づいた研究分野です。

 人生における「いいこと」に焦点を当てて気分を高める、つまりポジティブ感情を強化することにより、ネガティブ部分やうつ気分を減少させるというものです。

 ポジティビティ比とは、ポジティブ感情とネガティブ感情の比率を示すもので、これを3対1の割合に保っておくと、うつスパイラルに入らないとされています。

 もう少し詳しく説明すると、ネガティブな感情を1体験しても、ポジティブな感情をその3倍、体験すれば、気分の下降スパイラルに入らないで済むということなのです。

 そんなことは難しくて、できないと思うかもしれません。なぜなら、新型コロナ感染拡大の不安の感情や、仕事がこれからどうなるか、という不安は、とても大きいネガティブ感情ですから、これに太刀打ちできるようなポジティブな感情を3倍も体験することなど無理、と思ってしまうかもしれません。

写真はイメージです【時事通信社】


 ◆リセットボタンを押そう

 しかし、大事なのは感情の質や大きさではなく、感情体験の数です。ポジティブな感情、「あっ、いいな」という、ごくつかの間の経験です。それでいいと言われています。

 また、ポジティブ感情は「嬉しい」「幸せ」というだけでなく、「感謝」「好奇心」「何かをつくりだす創造」「信頼」「充実感」など、さまざまです。嫌な思いが浮かんだら、その後、ちょっとほっとできることを体験するように気をつけるということが大事なのです。

 ポジティブ心理学の米国人研究者、バーバラ・フレドリクソン博士は、これを「隠れたリセットボタン」と呼んでいます。

 不安で心臓がどきどきし始めたとき、ポジティブ感情を呼び起こせるような、気持ちのいい映像を見たり、猫が好きな人は猫をなでたり、好きな音楽を聴いたりして、リセットボタンを押します。

 つかの間、自分の気分をポジティブにリセットしてくれる処方箋を、あらかじめ用意しておくのがいいと思います。

 最近の論文では、新型コロナ感染拡大中のトルコの住人3000人余に対するオンライン調査で、ポジティビティ比と知覚リスクや幸福感などとの間に関連性があることが確認されたと報告されています。

 緊急事態宣言が再発出されている地域に住む人も、これからどうなるか不安がある人も、ポジティビティ比をキープして、心の免疫力を保っていただきたいと思います。

 

(文 海原純子)


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