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コロナ対策、それで大丈夫?~感染制御の専門家に聞く~ 堀賢・順天堂大学大学院教授(後編)

 新型コロナウイルスに関して、あまりに多くの情報が飛び交っています。その中で、私たちは何が正しくて、何を信じていいのか、と戸惑うこともあります。前編に続き、感染制御の専門家で、明快な解説で知られる順天堂大学大学院教授の堀賢先生にお話を伺っていきます。

フェースシールドとマスクを着用する百貨店の従業員(2020年5月撮影)【時事通信社】


 海原 コロナ対策では実際、多くの人が、外なら大丈夫という幻想を持っていますね。

  声を出した時点で、飛沫は必ず出てくるわけですから、食事が運ばれてきても、ずっとマスクを着けまま、談笑することがないようにしなければなりません。

 マスクを外してよいのは、口に食べ物を運ぶときだけ。マスクを外している間は、絶対に発声してはいけません。

 「乾杯!」とか、「プハーッ!」とか、「おいしい!」とか、感動を分かち合いたいのは分かります。でも、マスクを着けないで、これらの発声を絶対にしてはいけないのです。

 私も実際に「静かな会食」なるものを試してみましたが、感動をみんなと共有できないので、テンションは上がらず、全然、楽しくなかったです。罰ゲームかと思いました。「Go To イート」なんて、静かに会食しても、全然、楽しくないでしょうね。

 海原 笑い話では済まないですね。企業によっては、リモート勤務が可能なのに、トップがリモート嫌いで、実施していないところも、まだまだあります。

 堀 成功してきた企業のトップは、自分が若い時にしてきたことに自信があります。ですから、まず、ご自分の方針を変えたがらないですね。

 でも、「遅れている」と言われるのは嫌いなんです。競争に負けるのが嫌だから。だから、経団連(日本経済団体連合会)などで、「コロナ時代の新しいトップの在り方」なるものを発信し、企業トップに呼び掛けるのがいいのではないか、と思います。

 ◆換気は機械に任せていいの?

 海原 これからの季節、会社内の換気が不安なところもあります。ビルが24時間換気だからという理由で、窓を開けての空気入れ替えを禁止にしているとか。

  2003年にビル管理法が改正されて、特定建築物内にいる人たちの健康を守るための条件が明文化されました。

 特定建築物とは、デパートなどの規模の大きな商業施設や、映画館、劇場といった娯楽施設、博物館、美術館、ホテルや学校、オフィスビル、事務所など、不特定多数の人が利用する施設で、個人の住宅や住居兼の雑居ビルは該当しません。

 施行後の猶予期間もあったので、おおむね08年以降に建てられた大きなビルなら、新ビル管理法に基づいて建てられており、1人当たり1時間に30立方メートルの換気も達成できるように造られています。

 ですから、新しいビルで、ちゃんと空調装置をメンテナンスしているオフィスなら、機械換気を信頼して、任せて大丈夫です。

 もし心配なら、実際に二酸化炭素(CO2)濃度をCO2モニターで測定してみてもよいでしょう。CO2レベルが1000ppmを超えなければ、大丈夫です。

 1000ppmを超えてしまったら、換気条件を見直したり、部屋の定員を減らすといった対策が必要になります。

飛沫にもいろいろある(堀賢教授提供)【時事通信社】


 海原
 タクシーもアクリル板を設置している車がある一方、何もない車もあり、不安という声を聞きます。

 堀 タクシーは、公共の交通機関の中では非常に安全な部類といえます。タクシーの車内は、外気導入モード(ベントモード)にして、エアコンをつけると、1分間に1回の割合で空気が入れ替わるように設計されています。

 換気回数に換算すると、1時間当たり60回にもなります。例えば、病院で最もきれいな手術室の標準的な換気回数は、1時間当たり20~25回ぐらいですから、これと比べても、かなりの換気であることが分かると思います。

 タクシー専用車「ジャパンタクシー」を造っているトヨタ自動車と理化学研究所が連携して、スーパーコンピューターの「富岳」を使って行ったシミュレーションでは、後部座席の窓を開けても換気の効果は5%くらいしか改善せず、ほとんど影響がなかったそうです(データは未公表)。

 でも、運転手さん側の窓を少し開けると、運転手さん由来の飛沫は比較的、効率よく換気されるということだそうです。これを考えると、外気を入れた機械換気に任せるのが安心だという結論になると思います。


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