2024/12/04 05:00
テレビとSNSはどちらを信用すべきか
医療情報収集のヒント
近年、多くの人が病気や症状に関わる疑問をインターネットで検索しています。
例えば、「大腸がん」というキーワードは月間7万回以上検索されます。「頭痛」は11万回、「肺炎」は13万5000回、「コロナ」に至っては月間55万回も検索されています(1)。
総務省のアンケート調査によれば、「医療や健康について調べたいことがある場合」の情報収集に、8割前後の人がインターネットやSNSを使うと答えています(2)。
これは、若い人に限った話ではありません。60歳以上の比較的高齢の方に絞っても、その割合は変わらないからです。
確かに、最近は高齢の方もインターネットを使いこなしています。診察室で、スマホで医療情報サイトのページを開いてみせてくださる方もいますし、健康に役立つアプリを使っている方もいます。
さらに、最近増えていると感じるのが動画検索です。
医療情報を知りたい時、動画を検索する人が増えているが…
◇動画検索は増えている
私は、2年ほど前からYouTubeでスライド講義をアップロードしています。コロナ禍以前に各地で行った市民公開講座の内容を短いスライド動画にまとめたものです。
まだ本数は少なく、クオリティーもさほど高いものではありませんが、年間70万回近く再生され、その再生数は年々増えています。
また、動画への流入経路も変化してきました。
2020年1月の段階では、YouTube検索によって動画にたどり着く人の割合は19.8%でした。しかし、それが徐々に増加し、2021年1月には48.6%に達しています。検索エンジンの検索窓ではなく、「YouTubeの検索窓」にキーワードを入力する人が増えている、と考えることはできそうです。
私は医療情報サイトとYouTubeの両方を運営し、そのアクセス解析を定期的に行ってきました。まだまだテキスト検索が主流とはいえ、動画の影響力はかなり増していると感じます。
もちろん、人気YouTuberの皆さんとは比べ物にならないほど活動の規模は小さく、ジャンルが異なれば傾向も異なる可能性はあります。あくまで一つの仮説に過ぎませんが、今後注視すべきデータであるのは間違いないでしょう。
◇科学的根拠に基づく動画は少ない
では、そもそも動画検索によって得られる医療情報は、果たして信頼できるものなのでしょうか?
残念ながら、まだ安心してお勧めできる日本語の動画は非常に少ないのが現状です。
テキスト検索であれば、学会や公的機関などが公開する、信頼性の高い一般向け情報集にたどり着けますが、動画はまだまだ整備されていません。
科学的根拠のない、正確性に欠ける医療関連動画が上位に表示されることも多々あり、注意が必要です。
一方、英語の動画であれば、科学的根拠に基づいた分かりやすい動画が多くあります。学会や医療機関が多くの動画情報を発信しているからです。もちろん安全とは言いきれませんが、英語に慣れた人なら便利に使えるでしょう。
以上のように、医療に関して動画検索を行う際は、怪しげな情報を信用しないようご注意ください。
テキスト検索については、学会サイトが比較的便利に使えます。本連載の「医療について疑問を持ったら…学会サイト活用のすすめ」の記事をご参照ください。(了)
(1) Ubersuggestを使用して調査
(2) 総務省「情報通信白書 平成27年版」
山本健人氏
◇山本 健人(やまもと・たけひと)氏
2010年、京都大学医学部卒業。複数の市中病院勤務を経て、現在京都大学大学院医学研究科博士課程、消化管外科。Yahoo!ニュース個人オーサー。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、開設2年で800万PV超を記録。全国各地でボランティア講演なども精力的に行っている。
外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。著書に『医者が教える正しい病院のかかり方(幻冬舎)』など多数。当サイト連載『教えて!けいゆう先生』をもとに大幅加筆・再編集した新著は『患者の心得ー高齢者とその家族が病院に行く前に知っておくこと(時事通信社)』。
(2021/02/10 05:00)
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