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心臓が収縮する際に部分的に動きが悪くなる「たこつぼ症候群」は日本で最初に報告された。発症時の心臓の動きがたこつぼに似ていることから名付けられた。二俣川内科・循環器内科クリニック(横浜市)の井守洋一医師は「心筋梗塞と症状が似ていますが、全く別の病気です。解明されていないことも多くあります」と話す。
多くは心尖部が収縮せず、心基部が過剰収縮する典型的なタイプ
▽心筋梗塞に似た症状
たこつぼ症候群の主な自覚症状は、突然起こる胸の強い痛みや圧迫感、呼吸困難などだ。救急搬送されるケースが多く、心筋梗塞の疑いで搬送された患者の約2%が同症候群であると報告されている。
家族との死別や口論、がんなどの大きな手術といった精神的、肉体的ショックやストレスなどが発症の引き金になる。井守医師は「つらいことだけではなく、うれしい感情でも発症することがあります。子どもの結婚式やカジノで大金を当てた時に発症した例もあります」と話す。
近年の日本の研究では、精神的なストレスによる発症が約3割、身体的なストレスが約3割で、残りの約4割は不明と報告されている。
高齢女性に多く、ホルモンや交感神経の関与が疑われているが、詳しいことは分かっていない。「心臓に分布する交感神経から放出される物質を受け取る受容体の反応に男女差があるのではないかとも言われています」
▽多くは自然に改善
たこつぼ症候群には幾つかのパターンがある。8割は左心室の先端(心尖部=しんせんぶ)が収縮せず、上部の心基部が過剰に収縮するのが典型的だが、異なるパターンも存在する。
診断では、心筋梗塞と見分けるため、最初に冠動脈造影検査を行う。井守医師は「血管に管状のカテーテルを入れて血管の状態を診ます。心電図、心臓超音波検査、血液検査などと併せて診断します」と説明する。
治療は心臓の動きを助ける薬の点滴を行い、呼吸状態によっては酸素投与や人工呼吸補助装置を使うこともある。多くは10日前後で回復し退院できるという。ただ、大きな手術や病気を契機に発症した人などは重篤な経過をたどることもあり、心臓機能を助ける循環補助装置が必要になることもある。
過去の大きな災害後には、たこつぼ症候群が増加したという。井守医師は「コロナ禍での生活も発症のきっかけになるかもしれません。ストレスをためない生活を心掛けてください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/07/24 05:00)
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