2024/12/06 17:18
キャラクター活用による病院内での心地よい空間づくりの取り組み
岐阜大学 大学院医学研究科 臨床薬剤学分野 / 医学部附属病院 薬剤部 鈴木景子薬剤師、鈴木昭夫臨床教授と救急・災害医学分野 岡田英志准教授、小倉真治教授らのグループは、血清シンデカン-1が重症患者の臓器障害を反映することを明らかにしました。
血管内腔表面は、血流がスムーズに流れるためにグリコカリックスという糖タンパク質でコーティングされています。感染症をはじめとする炎症により、このコーティングが剝がれると血栓を生じ循環が障害され、臓器障害に至ります。このグリコカリックスの障害を定量化するために同研究グループはグリコカリックスの構成成分であるシンデカン-1に着目しました。グリコカリックスが障害されるとシンデカン-1が血管内皮から剥離し血中へ放出されるためシンデカン-1の血中濃度を測定すればグリコカリックスの障害の程度を推定できると考えました(下図)
同研究グループは、岐阜大学 医学部附属病院 高次救命治療センターに入室した重症患者の血液中のシンデカン-1濃度を測定し、シンデカン-1濃度が翌日の肝機能、腎機能や血液凝固系に関連する臨床検査値と関連していることを明らかにしました(表1)。
また、時間経過による臨床検査値の変化もシンデカン-1濃度の値によって異なることを明らかにしました。特に、ASTやALTは時間の経過とともにシンデカン-1濃度の値が低い人と高い人では差があることが分かりました。(下図)
さらに、血液中のシンデカン-1濃度は死亡率とも有意な関連を示し、血液中のシンデカン-1濃度が24.2から143.9に増えると死亡リスクがおよそ2倍になることも明らかになりました(表2)。
救急集中治療を受ける患者は臓器障害を併発することが多く、早期に臓器障害を把握することが患者救命に極めて重要です。今回の研究成果から、シンデカン-1は臓器障害をより早期に検出するための有用なバイオマーカーとなる可能性があります。同研究グループは、Covid-19の重症患者でも血中のシンデカン-1濃度が健常人の10倍以上に上昇することを報告しており、Covid-19の重症化の予測マーカーになる可能性を報告しています(文献2)。
今後、シンデカン-1の測定が実用化されれば、救急集中治療を受けられる患者やCovid-19の患者の重症化を未然に検出することができ、これらの患者の予後改善などに寄与することが期待されます(下図)。
本研究成果は、2021年4月23日(英国時間)に科学雑誌「 scientific reports 」誌のオンライン版で公開されました。
研究者のコメント
敗血症診療ガイドラインにおいて、敗血症は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と定義され、早期に臓器障害を把握することは患者の予後改善に極めて重要です。一般に臓器障害の前には循環障害を来すことが知られており、それを定量化することができれば臓器障害をより早期に発見できるというのがこの研究を始めたきっかけでした。そのような中でグリコカリックスに着目し研究を開始しました。
本研究結果からシンデカン-1は臓器障害を早期に検出するための有用なバイオマーカーになり得ることが明らかになりました。さらに、このことは臓器障害の発生過程で血管内障害が起こっていることを示唆しています。グリコカリックスは血管内皮の保護にも働いており、グリコカリックスの構造を維持することは臓器障害の予防にも繋がり、新たな創薬のターゲットにもなり得ると考えています。
参考文献
1. Okada H, Yoshida S, Hara A, Ogura S, Tomita H. Vascular endothelial injury exacerbates coronavirus disease 2019: The role of endothelial glycocalyx protection. Microcirculation. 2021 Apr;28(3):e12654. doi: 10.1111/micc.12654.
2. Suzuki K, Okada H, Tomita H, Sumi K, Kakino Y, Yasuda R, Kitagawa Y, Fukuta T, Miyake T, Yoshida S, Suzuki A, Ogura S. Possible involvement of Syndecan-1 in the state of COVID-19 related to endothelial injury. Thromb J. 2021 Jan 27;19(1):5. doi: 10.1186/s12959-021-00258-x.
論文情報
雑誌名:scientific reports
論文名:Serum syndecan-1 reflects organ dysfunction in critically ill patients
著者:Keiko Suzuki, Hideshi Okada, Kazuyuki Sumi, Hiroyuki Tomita, Ryo Kobayashi, Takuma Ishihara, Yoshinori Kakino, Kodai Suzuki, Naomasa Yoshiyama, Ryu Yasuda, Yuichiro Kitagawa, Tetsuya Fukuta, Takahito Miyake, Haruka Okamoto, Tomoaki Doi, Takahiro Yoshida, Shozo Yoshida, Shinji Ogura & Akio Suzuki
DOI番号:10.1038/s41598-021-88303-7
【本件に関する問い合わせ先】
<研究に関すること>
岐阜大学大学医学部附属病院 薬剤部 臨床教授 鈴木昭夫
<報道担当>
岐阜大学医学系研究科・医学部事務部総務係
電話:058-230-6054
E-mail: igakubu@gifu-u.ac.jp
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