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胸の骨(胸郭)の一部分が陥没している漏斗胸(ろうときょう)は生まれつきの疾患で、患者は主に子どもだが、成人患者も少なくない。漏斗胸専門外来で多くの診療に当たる慶応大学病院(東京都新宿区)呼吸器外科の政井恭兵専任講師は「インターネットなどの情報ツールの活用で患者さんが自分の病気について認識するようになり、外来患者さんが増えています」と話す。
陥没が大きいと、心肺機能に影響を及ぼすことも
▽小児期に受診せず
漏斗胸の患者数は国内外の研究報告によってまちまちだが、女性より男性に多いとされる。原因は肋骨(ろっこつ)の前方部分(肋軟骨=ろくなんこつ=)の過形成や遺伝などさまざまな説があるが、明らかではない。
大半は、生まれた時から胸にへこみが見られるが、小さい頃は目立たず、成長とともにはっきり分かるようになるケースもある。容姿への悩みで人間関係に行き詰まったり、いじめに遭ったりすることがあるのも、この疾患の特徴だ。
同科の専門外来の受診患者は、10代が30~40%、20代が30~40%、30代が10%ほどだ。政井医師によると、胸のへこみが気になっても、受診の機会がないまま成人した患者も少なくないという。また、漏斗胸の専門医師が少ないため十分な治療ができていないケースもあるそうだ。
▽金属バー挿入で治療
漏斗胸は、前胸壁の陥没によって心臓と肺が圧迫を受ける。多くは検査でも異常が見られず、「心因性」とされるケースが多いが、動悸(どうき)や痛みのほか、食べた物が通りにくいなどの症状を訴える患者もいる。こうした症状は子どもに比べ成人で強い傾向にあるという。漏斗胸で心肺機能が低下している人や症状の強い人、容姿が気になる人が治療の対象だ。
治療は、ナス(Nuss)法と呼ばれる手術が主流だ。金属製のバーを胸郭に入れて、体の内側から前胸壁を持ち上げてへこみを改善する。手術時間は90分程度で、ほとんどの患者が術後5~7日で退院可能だ。バーは2~3年留置し、胸郭が固定したら取り除く。同科では、ナス法による手術を年間約80例行っているという。
「成人の肋軟骨は硬くなっているため、手術は小児の場合より難しくなりますが、手術で陥没は修復され、心肺機能の改善も期待できます。悩んでいる方は専門外来の受診を検討してみてください」と政井医師は呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/10/17 05:00)
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