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50歳前後で多く発症する家族性アルツハイマー病は非常にまれな遺伝病だが、高齢で発症するアルツハイマー型認知症にも遺伝のほか、さまざまな要因が絡んでいる。川崎幸(さいわい)クリニック(川崎市)の杉山孝博院長は「65歳未満で発症する若年性アルツハイマー病の推定患者数が約1万8000人で、家族性はその1割以下です」と話す。
先のことを心配するより、充実した人生の送り方を考えて
▽40~60代で発症
アルツハイマー型認知症患者の脳内にはアミロイドベータというタンパク質が蓄積し、脳の萎縮が徐々に進行する。物忘れなどの症状で気付くことが多い。遺伝性の家族性アルツハイマー病について、杉山院長は「アルツハイマー型認知症のほとんどが70歳以降に発症するのに対し、家族性は40~60代の初老期に多く発症するのが特徴です」と説明する。
家族性アルツハイマー病の原因として、アミロイドベータの蓄積を促進する三つの遺伝子の変異が特定されている。ただ、これらの変異が見つかるのは患者のうち約半数だという。
「家族性の半数を含む若年性アルツハイマー病の約95%は、既知の原因遺伝子の変異がありません。親が60代でアルツハイマー病になったので自分も心配といった相談には、『遺伝は深刻に考えなくていいでしょう』とお話ししています」
▽複合的要因で発症
一方で、高齢発症のアルツハイマー型認知症は生活習慣などが大きく影響するが、遺伝的な要因も知られている。血中コレステロールの運搬に関わるアポリポタンパクE(ApoE)には数種類の遺伝子多型(必ずしも病的影響を与えない遺伝子変異)があり、そのうちの4型を親から受け継ぐと、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高まる。
しかし、4型がなくても発症する人や、4型があっても発症しない人もいる。「ある遺伝子の変異があれば必ず認知症になるわけではなく、加齢や環境などさまざまな要因が複雑に絡んで発症します」
アルツハイマー型認知症の補助的な診断にApoE多型の検査がある。しかし、杉山院長は「家族が発症する確率を調べる検査ですが、有効性の面から推奨はされていません。先のことを心配するよりも、生きがいを持って人生を過ごす方法を考える方がよいでしょう」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/01/08 05:00)
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