歩幅広げて認知症を予防
狭いと高まる発症リスク(国立環境研究所 谷口優主任研究員)
新型コロナ禍でのテレワークなどで運動不足を自覚する人が多い中、歩幅を広げて歩くことが認知症予防に役立つという研究が注目されている。歩幅を広げる効用と方法について、国立環境研究所(茨城県つくば市)の谷口優主任研究員(前東京都健康長寿医療センター研究員)に聞いた。
▽歩幅と認知症の関係
谷口主任研究員らの研究では、歩幅が狭い人は広い人に比べ、認知機能低下のリスクが3倍以上であり、また、歩幅が狭い状態のまま年齢を重ねると認知症発症のリスクが2倍以上になることが明らかになった。
歩く速度は歩幅と歩調(テンポ)で決まるが、認知機能と関連するのは歩幅で、歩調は関連がなかった。理由について谷口主任研究員は「歩幅の調整は、脳の中で多くの部位が関係しています。そのため、歩幅が狭くなっている場合は、脳のどこかで異変が起こっている可能性が考えられます」と指摘する。
歩幅を広げることは単純なようだが、足腰の筋肉を適切に使い、転ばないようバランスを保つ必要がある。逆に言えば、歩幅を広げることができれば脳が正常に機能しているとも考えられるという。
▽歩幅を広げるコツ
広げた歩幅の目安は男女とも65センチ。横断歩道の白線の幅が約45センチ、足のサイズを約24センチと想定した場合、一方の足の爪先を白線の手前に合わせ、もう一方の足で白線を踏まないように越えればクリアできる。
ただ、実際には予想以上に難しい。「いきなり歩幅を大きく広げようとせず、時間をかけて広げていくことをお勧めします」
その場で2、3回小さく足踏みし、いつもより少し歩幅を広げる感じで歩きだす。「ワンツー・スリー、ワンツー・スリー」のリズムで歩き、3歩目の「スリー」で歩幅を広げる。このような方法で毎日少しずつ歩幅を広げていくとよい。
認知症の多くを占めるアルツハイマー型認知症は約20年かけて進行し、軽度認知障害(MCI)の状態を経て発症する。MCIと診断された人のうち認知症を発症した人は約2割で、約5割は発症せず、約3割は回復したとの報告もある。
「MCIの状態であれば、意識して歩幅を広げることで認知機能を取り戻せる可能性があります。テレワークなどで運動不足を自覚している人は、感染対策をした上で、屋外で歩幅を広げた歩き方をするよう努めてください」と谷口主任研究員は助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/09/17 05:00)
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