治療・予防

認知症のスムーズな受診
本人の納得と理解が近道に(和光病院 今井幸充院長)

 もの忘れなど認知症を疑う症状が見られるのに本人が受診を拒否する場合、家族はどのように対応すればいいのだろうか。長年、認知症の診療や家族のケアに携わる和光病院(埼玉県和光市)の今井幸充院長に聞いた。

丁寧な会話が早めの受診につなげるコツ

丁寧な会話が早めの受診につなげるコツ

 ▽早期受診が大切

 同じ症状でも治療で治せるものと、治せないものがある。前者は脳の空洞に脳脊髄液という無色透明の液体が過剰にたまる「正常圧水頭症」や、頭部打撲で脳を包む硬膜と脳の隙間に血液がたまる「慢性硬膜下血腫」などがあり、後者の代表は「アルツハイマー型認知症」だ。

 今井院長は「治るケースを見逃さないためにも、もの忘れの症状が見られたら速やかに受診して原因を見極めることが大切です」と言う。

 ただ、たとえ認知症であっても、早く診断して治療すれば、進行を遅らせることができる。また、早い段階から病気の特徴や今後の経過を把握しておけば、いずれ必要になる介護について家族で考える余裕も得られる。

 ▽ごまかさず向き合う

 受診を拒否する人に「健康診断に行こう」「私の受診に付き添って」などとごまかして病院に連れていくのは良くないという。ごまかされたことを本人は必ず察する。また、家族にも自責の念が残る。「家族間の信頼関係が揺らぐと、その後に悪影響が出ます」

 では、どうすれば受診してもらえるのか。「本人ときちんと向き合って、話し合うことが何よりも大切です」。受診を拒否する背景には、家族に自分を見くびられたり、非難されたりすることに対する自己防衛の気持ちがあるという。

 家族はそうした不安に寄り添うことが必要だ。「とにかく受診」ではなく、「治るもの忘れもあるから一度診てもらおう」「認知症でも今はいい薬があるみたい」などと心を込めて説明し、「あなたのことが心配だから、私のために受診してほしい」と伝えるのがポイントだ。本人の納得が受診への近道になる。

 新型コロナウイルス感染拡大の中、受診をためらう人もいる。「受診は不要不急ではありません。医療機関は十分な感染対策を行っているので、マスク着用や手洗いを守った上で安心して受診を」と今井院長。

 「マスクの着用を嫌がる人には、街行く人らを指し『みんなマスクを着けているでしょう』『今はマスクが必要ですよ』といった言葉を掛けると、すんなりと着けてくれることが多いです」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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