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肥満症の患者さんの診察時に、「適切と言われる量しか食べていないのに、どんどん太っていきます」と言われることが多々、あります。そんなときに考えられる二つの可能性について、今回はお伝えしたいと思います。
写真はイメージです【時事通信社】
◇思った以上に食べている
厚生労働省「日本人の食事摂取基準 2020」 によると、二重標識水法(編注)で測定した実際の総消費エネルギー量と、申告した摂取カロリー量がおおむね同じなのは、第三者が摂食量を観察した場合のみです。
自己申告では、どのような記録方法を取っても過小申告となる傾向にあり、また体格指数(BMI)が高くなるにつれて、この傾向は強くなっていきます。
私の外来では、可能であれば第三者に、全ての食べたものを写真で記録してもらうようにお願いしています。正しい記録を基に、管理栄養士や医師の指導を受けることで、改善すべき食行動を見つけて、解決の糸口を探っていきます。
◇疾患が原因の可能性も
肥満の多くは、摂取カロリーとエネルギー消費の不均衡、つまり過食や運動不足などによって引き起こされますが、特定の疾患に起因する「二次性肥満」も存在します。
甲状腺ホルモンの分泌が低下して代謝が悪化する甲状腺機能低下症や、コルチゾールの過剰分泌によって体幹部に脂肪が蓄積したり、顔が丸く腫れたりするクッシング症候群などの内分泌疾患などが原因になり得ます。
また、一部の精神病薬やステロイドなどの薬剤も肥満に影響します。これらによる二次性肥満は、適切な治療や薬剤の変更によって大きく改善する可能性があります。
肥満からなかなか抜け出せない原因を特定し、早期に適切な介入をすることで、健康被害を防ぐことができます。私の外来も含め、保険診療で肥満症の原因検索や治療を行っている内科は、全国に存在します。お悩みの方はぜひ、遠慮なく受診していただければと思います。
(編注)二重標識水法=エネルギー代謝量を間接的に測定する方法。炭水化物と脂肪が体内で燃焼した場合、生成する水と二酸化炭素の比率が異なることを利用する。
渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。
(2022/03/30 05:00)
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