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「母乳バンク」は、早産で小さく生まれた赤ちゃんが自分の母親から母乳が得られない場合に、医師の要請に応じて、寄付された母乳「ドナーミルク」を提供する施設だ。今年4月に新施設が稼働したばかりの「日本母乳バンク協会」代表理事で昭和大学小児科の水野克己教授に、ドナーミルクを与えるメリットや母乳バンクの活動について聞いた。
母乳バンクの仕組み
▽母乳は「薬」
「赤ちゃんにとって、母乳は栄養としてだけでなく、さまざまな病気を予防する『薬』としての役割も大きい」と水野教授は説明する。腸の一部が壊死(えし)する病気で、早産児の生死に関わる壊死性腸炎は、粉ミルクよりも母乳を与えたときの方がかかりにくい。また、早産児に多い未熟児網膜症や慢性肺疾患なども、母乳で育てた方がかかりにくいという。
しかし、全ての母親が出産直後から十分な母乳が出るわけではない。特に早産の場合は母乳が出る準備ができていないこともある。また、薬の服用などの理由で母乳を与えられないこともある。
このような場合に、日本小児科学会は、母親が授乳できるようになるか、粉ミルクを安全に使用できるようになるまでの「つなぎ」として、ドナーミルクの使用を推奨している。「病気のリスクを軽減するには、出産後12時間以内に与え始めるのが理想です」
▽無償で提供
母乳バンク協会はドナーミルクの管理や保管などを一括して担う。全国から寄付された母乳は、都内に完成した新施設で低温殺菌処理や細菌検査により安全性を確認。全国のNICU(新生児集中治療室)で治療中の、出生時の体重が1500グラム未満の極低出生体重児に無償で提供される。
ドナーミルクの提供を受けた赤ちゃんの数は、「2020年度は203人でしたが、21年度は500人を超える見込みです」と水野教授。ただ、極低出生体重児は年間6000人以上誕生しており、ドナーミルクの使用が推奨される赤ちゃんは、年間5000人程度は存在するという。「ドナーミルクのメリットが認知されてきたこともあり、需要は年々高まっています」。
母乳の寄付を希望するドナーの登録も増えているが、安全なドナーミルクを確保、提供するための施設や資金、人材が不足している。「母乳バンクのインフラ整備は喫緊の課題ですが、運営は寄付金が頼りです。小さな命を社会全体で守るという認識を多くの人にもってもらい、母乳バンクの拡充につなげていきたい」と水野教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/08/14 05:00)
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