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近年、傷ややけどの新たな治療法として注目されているのが、乾かさずに治す湿潤療法だ。
「体が本来持っている自己治癒力を最大限に生かす治療法なので、完治するのが早く傷口がきれいになります。空気に触れるのを防ぎ、痛みも感じにくくなります」と、なついキズとやけどのクリニック(東京都江東区)の夏井睦院長は話す。
右手にやけどを負った生後18日の女児の治療経過のイメージ
▽傷口は乾かさない
擦り傷などは、細菌が傷口から入らないようせっけんを使って水で洗い流して消毒をし、ガーゼで保護している人が多いのではないか。
しかし、独自に考案した湿潤療法で多くの患者を治療してきた夏井院長は「せっけんを使うと、もともと持っている油膜が壊れてしまいますし、消毒液には界面活性剤が含まれており自己修復細胞という傷を治す細胞が死んでしまうため治りが悪くなります」と警鐘を鳴らす。
湿潤療法ではせっけんも消毒液もガーゼも不要だという。「ガーゼは通気性があり空気を遮断できないため痛みを伴い、特に小さいお子さんは嫌がります。かさぶたができると痕ができてしまいます。早くきれいに治すためには乾かさないことが大切です」
▽傷口は水道水で洗浄
湿潤療法の手順はシンプルだ。まず、水道水できれいに洗い、清潔なタオルなどで傷口を押さえて止血する。その後、市販のハイドロコロイドなどの創傷被覆材で覆うと、5分程度で痛みが和らぐという。
「ハイドロコロイド製剤は、傷口からしみ出る体液を閉じ込め湿った環境を作ることで、病原菌を減らし傷を早く治す役割があります。自己治癒力は湿った環境で働いてくれるのです」と夏井院長。
やけどの場合は、すぐに流水で10分ほど冷やしてから同様の処置を行う。症状の程度にもよるが、3~4日で痕も残らず見た目もきれいになって完治するケースが多い。切り傷、靴擦れ、床擦れなどにも効果が期待できるという。
応急処置として白色ワセリンを塗り、ラップで密閉してもよい。蒸れるなどすると感染症が起きる恐れがあるので注意しておき、通常は1日1~2回、夏は2~3回貼り替え、その際に傷口周辺を洗う。乳幼児のやけどへのラップの使用は控える。
夏井医師による湿潤療法を取り入れている医療機関は全国に300~400ほどあり、ウェブサイト(http://www.wound―treatment.jp/dr/doctors.htm)で探すことができる。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/08/20 05:00)
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