教えて!けいゆう先生

医師が何もしてくれない!
診察室で求めるべきサービスとは

 何らかの症状があって医師の診察を受けたものの、特に検査もされず、薬も処方されなかった際に「何もしてもらえなかった」と不満に思ってしまう方がいます。わざわざ長い時間待合室で待って、お金まで払っているのですから、不満を抱いてしまうのも自然なことでしょう。
 しかし実際には、医が検査や薬の処方を行わなかった時は、「何もしなかった」のではなく、診察によって「『検査や薬が不要であるという判断』を提供した」というケースが多いのではないかと思います。

症状により「検査や薬が不要であるという判断」を提供する場合もある

 ◇軽いけがの場合

 私は日頃の外来で軽いけがの患者さんをよく診療します。中には局所麻酔をして縫わねばならない傷もありますが、軽いすり傷(擦過傷)のように、特別な処置の必要がないけがもたくさんあります。

 軽いすり傷なら、一般的に消毒の必要はありません。私が幼い頃は自宅にイソジンのような消毒液があり、すり傷には必ず塗っていました。「赤チン」と呼ばれていたこともあります。消毒をしてもらうためだけに通院した経験もあります。

 しかし近年は、消毒液が傷の治りを悪くする恐れもあることから、特別な理由がない限り消毒は全くしません。

 最も大切なのは水道水でしっかり洗うこと。自宅でもできますので、傷を診察したのち、こうした生活指導をするケースがほとんどです。(※縫う必要がある深い傷なら縫合前に消毒するのが一般的です)

 ◇特別な薬もいらない?

 軽い傷なら特に薬も必要なく、希望があれば軟こうを少しだけ処方する程度です。軟こうの目的は創部を湿った環境にしておくことです。特別な治療薬というわけではありません。自宅にワセリンなどの軟こうをお持ちの方なら、それを塗るようお伝えし、患者さんの費用負担を考えて新たに処方はしません。

 しかし、ワセリンのような軟こうとクリームを混同している方がいるため、その点については丁寧に説明します。また、(1)軽い傷であれば水がかかってもよい(2)お風呂上がりに軟こうを付けなおして湿潤環境を保つ-ことなどを指導するのが一般的です。

 骨折が疑われるケースでない限り、レントゲンのような画像検査も要りません。放射線の被ばくのある検査は、本当に必要な時以外に「念のため」といって撮影するのも望ましくありません。

 ◇診察室の外で

 すると、どうでしょう?検査や薬のように、目に見える形で患者さんに提供するサービスは何もありません。しかし、傷の診察で分かったさまざまな情報を患者さんに提供し、自宅での注意点を伝える、というアプローチは、専門家としてきっとお役に立てるのではないでしょうか。

 これはもちろん、けがに限った話ではありません。多くの病気は、「診察室の中で治る」わけではありません。医師と会わない日常での患者さんの行為が、病気を良い方向に向かわせる、といったケースは多くあります。

 患者さんとしても、むしろ「診察室の外でどんなことに気をつけて対処すればいいか」を医師から最大限聞き出し、「医師を上手に利用する」という感覚を持つ方が得策です。

 もちろん医師の側も、「何もしてくれない」という不安や不満を持たれないよう、丁寧な説明を心がけなければならないでしょう。(外科医・山本健人)

教えて!けいゆう先生

横浜市立大学医学部医学科同窓会 倶進会