治療・予防 2024/12/18 05:00
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性感染症の梅毒はこの十年で急増する中、感染予防や治療といった対策が急務となっている。今年初めには、1回の注射で治癒が期待できる新薬が発売され、既存の内服薬との使い分けが進むとみられる。愛知医科大学病院(愛知県長久手市)感染症科の三鴨廣繁教授に聞いた。
梅毒の感染者数
▽患者数が10倍に
梅毒は、性的接触の際に「梅毒トレポネーマ」という細菌が皮膚や粘膜から侵入して発症する。感染から1カ月程度で陰部や唇などにしこり、ただれ、潰瘍などが表れ、その後全身の皮膚の発疹、倦怠(けんたい)感、頭痛、発熱といった症状が出てくる。脳や脊髄の炎症でまひなどの症状(神経梅毒)を来すこともある。
2021年の報告数は7873人(国立感染症研究所調べ)と11年の10倍に近い。中でも20~40代の男性と20代前半の女性が多く、感染経路は異性間接触が多かった。三鴨教授は「感染に気付かないまま、広がってしまうようです。性行為の後に陰部の病変や皮膚の症状があれば、梅毒の検査ができる医療機関を受診してほしい」と話す。
治療はペニシリン系抗菌薬の内服を1日3回、4週間程度続けることが基本。治療後に血液検査の値が一定の基準に達したら治癒と判定される。しかし、「薬を飲み忘れたり、2回目以降は受診しなかったりする人もいます」。一度治癒しても、感染者と性的接触すれば再感染のリスクがある。
▽薬がゆっくり吸収
今年1月、新たなペニシリン系抗菌薬として筋肉注射用の製剤が発売された。注射後ゆっくりと薬が吸収され、血液中に長くとどまるため、感染から1年未満の早期梅毒には1回、1年以上経過した後期梅毒でも週1回ずつ計3回の注射で済む。
三鴨教授は新薬について、「性感染症の制御の点で、最短1回の注射で治癒が可能である意義は大きい」と言う。注射に抵抗がない患者や、胎児の感染を防ぎたい妊婦への使用が考えられるという。
ただし、新薬は神経梅毒は対象外。また、従来の内服薬と同じようにアナフィラキシー(重いアレルギー反応)などの副作用があり、慎重に医療現場に導入する必要があるとも指摘している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/09/05 05:00)
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