治療・予防

家族の世話をする子ども
~多様な支援を―ヤングケアラー(早稲田メンタルクリニック 益田裕介院長)~

 ヤングケアラーとは、慢性的な病気や障害、精神的な問題を抱える家族の世話をする、18歳未満の子どもをいう。幼いきょうだいや祖父母の見守りなど、必ずしも病気ではないケースも含まれる。早稲田メンタルクリニック(東京都新宿区)の益田裕介院長は「ヤングケアラーの解決には、多様性を持った支援が必要です。まず、私たちがヤングケアラーを知り、周知させていくことが大切です」と話す。

慢性的な病気や障害、精神的な問題を抱える家族の世話をするヤングケアラー

 ▽本来は大人が担うこと

 中学2年生と高校2年生を対象にした2020年度の厚生労働省の調査では、約20人に1人がヤングケアラーだと判明。世話をする対象は、半数がきょうだいで、父母、祖父母が続く。世話にかかる時間は、1日平均約4時間に及ぶ。

 益田院長は「病気のきょうだいの世話や食事の支度、祖父母の入浴やトイレの介助、うつ病の親の話し相手など、ヤングケアラーには多くの負担が強いられています」と説明する。勉強時間が取れないため学校の成績が上がらず、遅刻が多いなどの影響が出たり、友達関係を築けずに孤立してしまったりすることも少なくない。隠れてリストカットを繰り返す子もいるという。

 さらに、将来的な問題もある。自らを犠牲にして自己を確立できないまま大人になると、自分が何をしたいのか、何が好きなのかが分からず、周囲とのギャップに悩む。「社会的には成人していても、考え方が未熟で、人間関係を築くのが苦手な傾向があります」。うつ病などの精神疾患を発症することも少なくない。

 ▽支援体制整備が必要

 医療面では、病気や障害を持つ患者本人を支援する制度はあるが、世話をしている側への支援制度は無い。「患者の主治医や訪問看護師なども、世話をしているのが子どもの場合、疲れ切っていると分かっていても、どうすることもできないでいます」と益田院長。

 一番の問題は、ヤングケアラー自身が悩みを相談する場所が少ないことだ。「頼られることに満足感や充足感を抱く子もいます。家族のために何かをしてあげたいという子どもの場合は、介入の仕方も考えながら、世話にかかる負担を減らしていく必要があります」

 子どもの置かれた状況や年齢に応じた多様な支援が急務とされ、現在、医療機関から自治体の支援窓口に連絡できる体制が整えられつつある。都道府県ごとにヤングケアラーの相談窓口も増えており、周囲から見て見過ごせない状況の場合は、相談を促すことも必要だろう。(メディカルトリビューン=時事)

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