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スマホの使い過ぎで、体の不調を訴える人が増えている。物が二重に見える「複視」を訴える急性内斜視、いわゆる「スマホ内斜視」もその一つだ。スマホ内斜視の詳細や治療法について、井上眼科病院(東京都千代田区)の若倉雅登名誉院長に聞いた。
増える若年層の急性内斜視
▽神経のけいれんで発症
近くの物を見るときは、ピントを合わせるために脳から神経が刺激され、眼の鼻側に付いている内直筋が縮むことで、両眼が内側に向く。これを近見(きんけん)反応という。
近くの物から遠くの物に視点を移すと近見反応は緩められる。脳にそれをつかさどる機能はなく、眼は自然に元の位置に戻る。しかし、近くの物を長時間見続けることで近見反応が制御不能になると、神経がけいれんを起こして眼は内側に寄ったままの状態となる。これが急性内斜視だ。
▽手術で眼の向きを調整
若倉名誉院長によると、近年スマホやタブレットなどで目を酷使したことが原因と思われる急性内斜視で同院を受診する患者が増えている。「日本より早くデジタル機器が普及した韓国やインドなどでは、スマホ内斜視の臨床研究が盛んに行われ、実態が分かってきました」
韓国で2009~14年に大学病院の小児眼科を急性内斜視の症状で受診した12人(7~16歳)について調べたところ、全員が30センチ以下の距離で一日平均4時間以上、4カ月以上にわたりスマホを使用していたことが分かった。12人中9人が、物が横にずれて見える水平複視を訴え、特に遠くを見る時に生じやすかった。スマホの使用中止により、全員改善したが、5人は手術が必要だった。
一方、インドでは新型コロナ禍でスマホを使ったオンライン授業の影響により、急性内斜視と診断された6~18歳の男児8人は、1日4時間以上スマホを使っており、このうち7人が複視を訴えた。
スマホ内斜視の治療ではまず、スマホの使用を長くても一日4時間までに抑え、目を休ませる。特殊なレンズの眼鏡で矯正する治療法もあるが、効果がなければ手術で内直筋を調整する。
若倉名誉院長は「国内でも、眼科医へのアンケートなどでデジタル機器の使い過ぎによる急性内斜視が若年層で増えていることが示唆されています。国を挙げて注意を呼び掛ける必要があります」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/10/01 05:00)
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