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病と闘う子どもの「お友達」
~活躍する「応援犬」マサ~

 国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)に入院し、病気と闘う子どもたちの支えとなるファシリティドッグ(応援犬)のマサが、活動開始から2年目を迎えた。マサにとって子どもは触れ合い、遊ぶ「お友達」だ。お友達を元気づけ、笑顔にさせる。ハンドラー(パートナー)としてコンビを組む権守礼美(ごんのかみ・あやみ)さんは「マサが子どもたちのかけがえのない存在になってきた」と手応えを感じるとともに、二人三脚でさらなるスキルアップを目指す。

マサと患者の子どもはお友達

 ◇大きな支えに

 スタートは2021年の7月。最初は一つの病棟と重い病気を持つ子どもと家族を支える医療型短期入所施設「もみじの家」が活動範囲だったが、二つの病棟が加わった。

 処置室や手術室、リハビリテーション室までマサが付き添う。大人でも手術の前にはとても緊張するし、家族らに見守ってほしいと思う。小さな子どもであれば、なおさらだ。励まし、元気づけるマサの支えは大きい。手術でなくても、採血や点滴なども子どもにとっては気が重い。小児がんの場合に実施する骨髄検査などは何回も行う必要があり、大変な負担になる。

 マサが先に手術室に入る子どもを見送り、親が後に続くこともある。マサに勇気をもらった子どもは、「頑張って来るね」という言葉を残す。

マサとマサの絵を描いたお友達

 ◇触れ合い、共に遊ぶ

 まず、大事なのが触れ合いと遊びだ。子どもに体をなでてもらったりすることはセラピードッグと同じだが、次の一歩として遊びを通して発達を促すという段階がある。ボールを受け取ったり、ボタンにタッチして「ピンポン」と鳴らしたりする。ハンドラーの権守さんは、小児看護の知識を生かし、子どもの発達段階や子どもの状況に合わせた遊びを取り入れる。マサも上手にこなすと、たくさん褒めてもらったり、ご褒美のおやつをもらえる。サッカーのゲームでは、マサが小さなボールを押して子どもの相手をする。理学療法士(PT)と一緒にボッチャをすることもある。子どもから話を聞いた親は「本当にうれしかったみたいですよ」と喜んだ。

 マサはリハビリテーションでも活躍する。子どもがリハビリに取り組む時間が延びた。筋力を付けるために病棟の廊下を散歩する訓練では、1往復分、多く歩くようになった。PTや家族からの報告が権守さんを喜ばす。ゲーム感覚でやるリハビリに輪投げがある。筋力を回復させようとする子どもが、立ってポールに輪を投げる。輪が入るとマサが回収し、子どもが笑顔を見せる。ポールを倒さずに輪をくわえるようになるまで、練習を積み重ねた成果だ。

 権守さんは「触れ合いや遊びという時間を過ごすことで信頼関係ができる」と言う。検査によっては、子どもを眠らせるために麻酔を使うこともある。そんな時、マサはずっと横にいて子どもが眠るまで付き添う。海外の医療施設の研究統計によると、患者を支える犬などが痛みの緩和に役立つという。

ハンドラーの権守礼美さんとマサ

 ◇医療チームの一員として

 看護師の経験がある権守さんは、マサが医療関係者の邪魔にならないよう気を使いながら、マサの居場所を決めていく。チームで治療に当たる医師や看護師、子どもや家族を支援するチャイルド・ライフ・スペシャリストたちは忙しい。そうした事情は十分に分かっている権守さんだが、マサの活動範囲を広げられるよう努力した。

 「マサが居てもいいでしょうか」

 「どうぞ、居てください」

 マサの存在が医療関係者に認められるにようになり、「こういう状況だったら、一緒にいたらどうだろうか」とアドバイスしてくれるようになった。

 「マサと私が関わるのは治療の一環であり、私たちは医療従事者なのだ」

 マサのように患者の治療の支えとなることを「動物介在療法」と言い、日本より海外の方が進んでいる。権守さんは「マサが行くことができる場所を増やしたいが、活動の中身も問われる」と、気を引き締める。

 ◇一緒に暮らす

 マサはラブラドール・レトリバーという大型犬だ。表情が分かりやすく笑顔がかわいいゴールデン・レトリバーと比べ、気難しい表情をしているように見えることがある。しかし、感情は豊かで、なじみのセンター職員には尻尾を振って近寄って行く。権守さんはマサとのコミュニケーションで、「グッドボーイ」「グッドジョブ」という言葉をよく使う。出来た時にすかさず声を掛けることが大事で、それがマサのやる気を高める。

 住居の物件探しには苦労したが、権守さんはマサと一緒に暮らしている。「普段の生活も共に過ごすことで、体調管理を心掛ける。何よりもマサの表情から、気持ちを読み取れるようにすることが大事だ」。権守さんの意気込みを感じる。(了)

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