治療・予防

活動量多いほど認知症リスク低下
~余暇でも生活でも(新潟大学大学院 中村和利教授)~

 運動や家事などで体を動かすことは認知症の予防に役立つと考えられている。どの程度の活動量が認知症にどのような影響を及ぼすのだろうか。新潟大学大学院医歯学総合研究科(新潟市)環境予防医学分野の中村和利教授に聞いた。

身体活動量と認知症リスクの関係

 認知症を8年間観察

 中村教授によると、身体活動には「余暇」にやる運動やウオーキング、散歩、「生活」における家事、労働、通勤などがある。多くの研究結果に基づき、身体活動が認知症のリスク低下に関連するという十分な証拠があるという。しかし、余暇と生活それぞれの身体活動の認知症に対する影響を同時に検討した研究は今までほとんどなかった。

 中村教授らは40~74歳の地域住民約1万4000人を対象に、日常の余暇身体活動量と生活身体活動量を調査。余暇身体活動量を「しない」「少ない」「中程度」「多い」、生活身体活動量を「少ない」「やや少ない」「やや多い」「多い」の4グループにそれぞれ分けた。その後8年間、認知症の発症を追跡し、各グループの発症リスクを算出した。

 ◇少しの余暇身体活動でも効果

 その結果、認知症になったのは310人で、うち約9割が60歳以上だった。

 余暇身体活動量については、多いグループほど発症リスクが低かった。「しない」グループに比べ、「多い」グループで45%、「少ない」グループで30%リスクが低下した。「『少ない』グループは、ウオーキングだと1日14分間以内。その程度でも認知症リスクが30%低下するので、余暇活動を少しでも続けると良い影響が期待できます」

 生活身体活動も同様に、活動量が多いほど認知症発症リスクが低かった。「多い」グループの発症リスクは、「少ない」グループより48%の低下で、ほぼ半減した。

 余暇と生活の身体活動量がともに多い人は、より大幅にリスクが低下した。

 中村教授は「認知症のリスクを下げるには、余暇と生活の身体活動量がいずれも多いほど良く、さらに両方に積極的に取り組むことが最も良いと考えられます」と述べた。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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