新米医師こーたの駆け出しクリニック

低血糖 いざというとき あなたの助けが必要です 専攻医・渡邉 昂汰

 今回は、低血糖についてのお話です。これまでに、高血糖については何度もお伝えしてきました。慢性的な高血糖は、じわじわと血管をむしばみますが、低血糖は重度だと、一度で致死的になることもあり、ある意味では、高血糖より危険とも言えます。 

もし意識をなくして倒れている人に遭遇し、その人が糖尿病カードを持っていたら、カードの指示に従って救助をお願いします【時事通信社】


 低血糖とは

 低血糖とは、ブドウ糖の血中濃度が異常に低下した状態のことです。ブドウ糖は、体内で主にエネルギー源として使用されます。

 これが不足すると、まずは、動悸(どうき)・冷や汗・手の震えといった身体症状や、頭が「ぼーぅ」としたり、イライラしたりといった精神症状が出現します。

 さらに進行した場合、昏睡(こんすい)状態になったり、致死性の不整脈が起きて命を落としたりすることもあります。

 インスリンを過剰に分泌する疾患や、食事の摂取量や吸収の問題が原因のこともありますが、ほとんどは糖尿病のある人に、インスリンが過剰に効いてしまったときに起こります。
 
 低血糖が起きたら

 低血糖症状が表れたら、まずはブドウ糖の摂取が最優先です。次に、血糖値を測りましょう。15分後、30分後にも再検し、徐々に上がってくるようなら、ひとまず大丈夫です。

 しかし、対処が少し遅れると、さらに血糖値が低下して、自力で動けなくなってしまいます。そんなときのために、持ち歩いて欲しいのが「糖尿病カード」です。

 このカードには「私が意識不明になったり、異常行動をしていたら、私が携帯しているブドウ糖を飲ませてください」と書いてあります。
 
 ◇救助の際の注意点

 し意識をなくして倒れている人を見つけて、その人が糖尿病カードを持っていたら、カードの指示に従って救助をお願いします。

 ブドウ糖をそのまま意識のない人の口の中に投与してしまうと、誤嚥(ごえん)のリスクがあるので、口唇と歯肉の間に塗り込むのが最も望ましいです。

 1分1秒でも早く現場で対処することで、低血糖の重症化を防ぎ、救命率を上げることができます。

 糖尿病のある人、特にインスリンを使っている人にとって、低血糖は最も怖いことの一つです。

 なるべく低血糖を防げるように日々、工夫して診療をしていますが、認知機能の問題などで、一人では対処が難しい人もいるのは確かです。

 あなたの周りにも、きっと助けを必要とする人がいます。そんなときに、この記事を思い出していただけたら、とても嬉しいです。

(了)


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。
【関連記事】

新米医師こーたの駆け出しクリニック