治療・予防

ロボット支援手術「ダビンチ」
~保険適用広がり、負担軽く(日本ロボット外科学会 渡辺剛理事長)~

 ロボットを使って行う内視鏡手術「ロボット支援手術」の保険適用の範囲が広がっている。従来の手術に比べて、出血量が少ないなど患者のメリットは大きいという。日本ロボット外科学会の渡辺剛理事長(ニューハート・ワタナベ国際病院長)に現状と今後の展望を聞いた。

ダビンチのイメージ

 ◇術後の回復早い

 ロボット支援手術は、1990年代に米国で手術支援ロボット「ダビンチ」が開発され、2000年以降に日本に導入された。渡辺理事長らは05年に金沢大学、東京医科大学で初めてダビンチを使って心臓の冠動脈バイパス手術を行った。ダビンチによる手術は12年に前立腺がんで初めて保険適用になった。

 ダビンチによるロボット支援手術は従来の手術とは異なり、執刀医は手術台から離れた操縦席でロボットを遠隔操作して行う。ダビンチには人間の腕のような働きをする複数本の「アーム」が装備されており、患者の皮膚数カ所をそれぞれ1~2センチほど切って、アームの先に取り付けた鉗子(かんし)や3Dカメラを体内に挿入する。

 渡辺理事長は「アームの先端は七つの関節で可動域が広く、執刀医の指の動きを忠実に再現できます。開腹、開胸手術や、内視鏡手術では届かなかった場所の手術も可能です。ロボット支援手術は、切開による傷口が小さく、出血量が少ないため、術後の回復が早いのが特長です」と説明する。

 ◇専門医をランク付け

 ダビンチは22年末時点で世界で7500台以上が導入され、日本は米国に次いで多いという。日本ではダビンチのほか、Hugo(ヒューゴ)、日本発のhinotori(ヒノトリ)などが使われている。ダビンチは1月に1本アームの最新モデルが発売された。

 執刀医に高度な技術が要求されるダビンチ。医療機関が導入するにあたっては、製造販売元の米インテュイティブサージカル社の認定を受け、執刀医が日本国内の関連学会などが推奨するトレーニングを受講する必要がある。「日本ロボット外科学会では、ロボット支援手術の実績によって専門医の技術力を4段階にランク付けをしています」

 ダビンチによるロボット支援手術は、呼吸器、心臓、消化器、泌尿器、婦人科など各科領域の疾患に保険が適用されている。医療費が高額になったときの限度額適用認定などを利用することにより、心臓の僧帽弁形成術であれば自己負担限度額は、70歳以上で年収約156万~約370万円の「一般所得者」の場合、5万7600円となっている。

 「ロボット支援手術は、体力がなくて通常の手術では負担が重い高齢患者などにとっては福音であり、今後は女性に多いとされる甲状腺がんなど適用範囲がさらに広がることを期待します」。手術を希望する場合は、日本ロボット外科学会の専門医がいる医療機関などを受診して、自分の病気が対象になるか、保険が適用されるかなどを相談するとよいという。専門医は日本ロボット外科学会ホームページ(https://j―robo.or.jp/senmon/certificat/list.php)に掲載されている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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