新米医師こーたの駆け出しクリニック

「禁煙外来」がどんな所か説明します 
治療内容から保険適用条件や費用まで 専攻医・渡邉 昂汰

 5月31日は世界禁煙デーです。昨今はあちこちで禁煙キャンペーンが行われており、一度は試みたことがある人も多いと思います。しかし、自力での禁煙成功率は10%程度とも言われており、なかなか困難な道のりでしょう。そんなときにぜひ考えてほしいのが、禁煙外来の受診です。

 喫煙は糖尿病の発症、悪化にも関連しているため、私は糖尿病診療の一環として週1回の禁煙外来にも携わってきました。禁煙外来に興味はあるけどあと一歩踏み出せない人に向けて、今回は詳しい診療内容を紹介したいと思います。

禁煙は自力での成功率が10%程度といわれます。「禁煙外来」はあなたの大きな助けになるはずです【時事通信社】


 ◆禁煙するメリット

 まずは、禁煙することで得られるメリットを改めてお伝えします。健康面では、前述した糖尿病のほか、心臓発作、呼吸器感染、脳梗塞肺がんなど、さまざまな病気のリスクが低下します。

 他にも、味覚や嗅覚、歯の着色や口臭などの口腔環境の改善も見込めます。おまけに、たばこ代の節約にもなります。

 長年吸ってきたのだから、いまさら禁煙しても変わらない、と考える人もいるかも知れません。早いに越したことはないですが、禁煙に遅すぎることはありません。

 英国で行われた追跡調査では、34歳までに禁煙すると、非喫煙者と同じ生存率となることが分かっていますが、64歳までの禁煙でも3年間、寿命が延伸します。

 また、喫煙を続ける限り、周りの人を副流煙にさらし続けることになります。身近な人の健康を守れるというだけでも、禁煙にチャレンジする価値があると思いませんか。
 
 ◆誰でも通える?

 保険診療で禁煙外来に通えるのは、以下の4項目全てに該当する人です。

 A.ニコチン依存症に係るスクリーニングテストで5点以上
 B.35歳以上の場合、1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上(35歳未満では200未満でも適用)
 C.直ちに禁煙することを希望している
 D.「禁煙治療のための標準手順書」にのっとった禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意した

 スクリーニングテストを記事の最後に掲載しておきます。全10項目で、「はい」「いいえ」で答えられる簡単な質問です。過去に禁煙を試みたことがあれば、多くの人が5点以上になると思いますので、一度、チェックしてみてください。
 
 ◆飲み薬と貼り薬

 基本は全5回の通院で、全体でかかる金額は、薬にもよりますが、大体2万円くらいです。通院間隔は、初回から3回目までは2週間ごと、以降は4週間ごとで、喫煙欲を抑える貼り薬、もしくは飲み薬を処方します。

 貼り薬の方が安価ですが、皮膚がかぶれてしまう人もいるため、患者さんに合わせて、薬は決めています。順調に禁煙できているかどうかは、本人への確認だけでなく、呼気一酸化炭素濃度を測定してモニタリングできます。

 もちろん、医療の力添えがあっても、禁煙には患者さん本人の強い意志が必要で、うまくいかずにドロップアウトしてしまう人がいるのも事実です。

 私の外来では、禁煙外来に通っていることを周りの人に宣言してもらったり、やめたくなってきたら、通い始めた時の気持ちを思い出してもらったりして、とにかく通い続けていただくことを大切にしています。その上で、吸いたいときに、どうやって我慢するかを一緒に考えて、治療を進めています。

 禁煙は本人だけではなく、周りの人の健康につながります。そして、病気になる人が減れば、社会全体にとっても利益になります。これが、禁煙外来が保険診療で行われる大きな理由の一つだと思います。今回の記事を読んで、少しでも外来受診のハードルが下がり、禁煙に取り組む人が増えたら嬉しいです。

※5点以上ですと、保険診療で禁煙外来に通える必須4項目のうちの一つを満たすことになります

(了)


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。

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