治療・予防

子どもの重症蚊刺アレルギー
~強い皮膚症状、発熱(奈良県立医科大学 浅田秀夫教授)~

 重症蚊刺(ぶんし)アレルギー(蚊刺過敏症)は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染による珍しい病気だ。10歳未満の子どもに多く、ほとんどが20歳までに発症する。

 奈良県立医科大学皮膚科(奈良県橿原市)の浅田秀夫教授は「健康な子どもでも、蚊に刺された部位が強く腫れ、時には水膨れを伴うこともありますが、激しい皮膚の症状に加えて、発熱などの全身症状が見られる場合は、重症蚊刺アレルギーが疑われます」と話す。

蚊に刺されて赤く腫れ上がり、水膨れができている

 悪性リンパ腫の危険も

 EBVはありふれたウイルスで、蚊が血を吸う時に出る唾液などを通じてほとんどの人が小児期に感染する。一度感染すると、通常は血液中のBリンパ球という細胞に潜んでいる。ただ、ごくまれにナチュラルキラー(NK)細胞という別のリンパ球に潜伏感染し、NK細胞の増殖を引き起こすことがある。

 浅田教授は「理由はよく分かっていませんが、このようなEBV感染NK細胞増殖症の患者さんの一部では、蚊に刺されて体内に入った蚊の唾液成分に対して激しいアレルギー反応が起こります。これが引き金となってEBVが再活性化し、重症蚊刺アレルギーを発症すると考えられています」と説明する。

 重症蚊刺アレルギーでは、蚊に刺された部位が広範囲に赤く腫れ、水膨れや潰瘍を伴う。さらに、再活性化したEBVによる発熱、リンパ節の腫れ、肝機能障害などの全身症状も見られる。「重症蚊刺アレルギーはかなりまれな病気ですが、感染から10年前後でリンパ腫などの重篤な病気を発症することが多いため、早期診断が重要です」

 血液検査などで診断

 診断は、問診や診察、血液検査などで行う。症状だけでは、健康な子どもでも重症蚊刺アレルギーと区別がつきにくいケースがある。浅田教授は「過去にも蚊に刺された後に強い皮膚症状や発熱が見られたことがある、前年に蚊に刺された傷痕が今も残っているといった場合は、重症蚊刺アレルギーを疑う手掛かりになります」

 血液中のEBV・DNA量、NK細胞数が増えている場合は、重症蚊刺アレルギーと診断される。治療は、患部に強力なステロイド軟こうを塗布し、発熱などの全身症状にはステロイド薬を内服する。

 症状が治まった後も、定期的に血液検査などを行い、リンパ腫などへの進行の兆候がないかを調べる。「お子さんが蚊に刺されるたびに、腫れがひどく、発熱やリンパ節の腫れを繰り返す場合には、念のため、皮膚科や小児科を受診することをお勧めします」と浅田教授は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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