夏に注意、急な皮膚の腫れ
~壊死性筋膜炎(名古屋市立大学病院 加藤裕史副部長)~
皮膚の下の組織が細菌に侵されて壊死(えし)する重症の感染症がある。「壊死(えし)性筋膜炎」といい、夏に表れやすく、速やかな受診が必要だ。名古屋市立大学病院(名古屋市瑞穂区)皮膚科の加藤裕史副部長に聞いた。
壊死性筋膜炎の特徴
◇1~2時間で広がる
症状は〔1〕皮膚が急に赤く腫れて痛む〔2〕押しても消えない紫色の斑点(はんてん)ができる〔3〕血疱=けっぽう(血の水膨れ)ができる〔4〕発熱―など。それが1~2時間で広がるのが特徴という。発症部位は脚(太ももから下の部位)が多く、手、陰部、顔面などもある。
海外の研究では、発症率は年間10万人当たり1~10人で、日本の人口に当てはめると年間の患者数は約1250人~1万2500人になる。比較的珍しいが、夏に多いタイプもあり、加藤副部長は注意を呼び掛けている。
発症しやすいのは、糖尿病や肝臓病がある人、何らかの病気で免疫を抑える治療を行っている人など。原因となる細菌は、普段はのどなどにいる化膿(かのう)レンサ球菌が多く、けがなどの小さな傷から皮膚の下の筋膜まで侵入したり、他の感染病巣から血流に乗って皮下に達したりする。
別の原因菌であるビブリオ・バルニフィカスは、魚介類を生で食べた時に腸管の粘膜から侵入して皮下に達する。海水が付いた傷口から侵入することもある。日本では、約8割が7~9月に発生したと報告されている。川、沼、池などに生息するエロモナス菌は、水遊びのときなどに皮膚から侵入することがある。
◇救急受診を
治療には皮膚を切開し、死んだ組織をかき出す「デブリードマン」という方法がある。同時に、抗菌薬を使って原因の細菌を抑え、2週間程度かけて感染を治す。欠損した箇所を閉じる処置を行うが、傷の修復が思わしくなければ、健康な皮膚を移植してから閉じることもある。
一方、治療を尽くしても感染の勢いの方が強いこともあり、致死率は14~34%とされる。治療の成否を分けるかぎの一つは早期診断。加藤副部長は「脚が腫れて急激に赤みや紫色の斑点が広がるときや血の水膨れができたときは、救急病院で診てもらってください」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/07/10 05:00)
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