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超高齢社会を迎え、健康寿命の延伸が課題となっている。岩手医科大学(岩手県矢巾町)歯学部の小林琢也教授は「歯科医師が口や歯のケアに努めることで健康寿命を延ばすことができます」と話す。
歯数の減少と全身機能の低下
◇全身疾患と歯周病
「歯周病や虫歯による歯の喪失と、糖尿病、心疾患、肥満、がん、誤嚥(ごえん)性肺炎、認知症など全身疾患の関係を示すエビデンスは多く、疑う余地はないと思います」と小林教授。
原因の一つには、食物をかみ砕いて唾液と混ぜ合わせ、飲み込みやすくする「そしゃく能力」の低下が考えられるという。その結果、野菜など、そしゃくしにくい食物の摂取量が減り、抗酸化作用を持つビタミン類が不足する一方、カロリーの高い偏った食生活に陥りがちとなる。
また、80歳以上で歯が無い高齢者は、20本以上歯がある高齢者に比べ、記憶や学習に関わる海馬の他、認知機能や情動に関わる脳の部位が萎縮していたことが判明している。
岩手医科大学と米ハーバード大学の共同研究では、早期に歯を失うと認知症のリスクが1.9~2.4倍に高まることが分かった。ただし、歯が無い高齢者に義歯を入れてそしゃく能力を改善すると、脳の活動が回復するとのデータもある。
◇予防リハビリに力点
このような口と歯のケアの重要性を示すエビデンスから、「健康寿命を延ばす上で歯科医師の役割は大きい」。
従来の歯科診療は、歯周病や虫歯を予防・治療したり義歯を入れたりすることが中心だったが、現在はこうした治療に加え、食物をしっかりかんだり飲み込んだりする機能の低下を防ぐための「予防リハビリテーション」に力が入れられている。
歯科は、患者が全身疾患や認知症にかかる前から関わりを持つことができる医療機関であることから、かかりつけ医としていち早く異常に気付き、医科と連携して重症化を防ぐための窓口にもなる。必要な栄養素をバランスよく取れるよう指導し、全身疾患を予防することも可能だ。
「歯科医師が口腔(こうくう)の形態、機能、栄養の管理を行うことで、疾病予防や重篤化予防が可能になります」と小林教授は述べている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/10/22 05:00)
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