治療・予防

歯科医師は「過剰」なのか
~超高齢社会で役割増す(日本私立歯科大学協会 櫻井孝常務理事)~

 「歯科医師が過剰」との報道や歯科医院の後継者難などの影響で、歯科医師数は3年後に減少に転じるとみられている。日本私立歯科大学協会(東京都千代田区)の櫻井孝常務理事に、超高齢社会で歯科医師が果たす役割について聞いた。

歯科医療を受けていない高齢者は多い

歯科医療を受けていない高齢者は多い

 ◇歯科医院の9割が後継者難

 「2010年ごろから一部報道やインターネット交流サイト(SNS)で、『歯科医院はコンビニより多い』『過当競争で利益が上がらない』といった情報が広がったこともあり、歯科医師を志す若者が減少しています」

 現在、日本の歯科医師数は約10万7千人で人口10万人当たり85.2人。人口当たりの歯科医師数は経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中19位で、過剰とは言えないという。

 歯科医師数は都市部に偏在しており、歯科医師のいない「歯科医療過疎地区」が全国で約1200に上る。また歯科医院は全国に約6万8千施設あるが、開業歯科医の46.8%が60歳以上で、9割は後継者が決まっていない。このため25年以降は減少に転じると推定されている。

 ◇歯科診療のニーズは高まる

 「超高齢社会の日本では歯科へのニーズは高まると考えています」。歯周病などの口腔疾患は、誤嚥(ごえん)性肺炎やがん、心臓病、糖尿病、肥満認知症などとの関連が指摘されている。また、加齢による心身の衰え(フレイル)の原因となり、要介護状態となるリスクが高まることが危惧される。

 一方、要介護高齢者のうち歯科治療が必要な人は64.3%だが、実際に歯科を受診している割合は2.4%。こうした人は歯科訪問診療を受けるべきだが、実施している歯科医院は高齢者10万人当たり約40施設と極めて少ない。

 かつて虫歯の治療を中心とした歯科医療は近年、予防・口腔(こうくう)管理を中心とする医療に変わりつつある。歯科の領域も、食べたり飲み込んだりする機能を改善するリハビリテーション、インプラント、歯ぎしりや顎(がく)関節症の治療、再生医療など広がっている。

 「歯科医師は子どもから高齢者まで、食べる、話す、呼吸するといった機能の維持、向上を図り、健康に貢献し、やりがいがある安定性の高い仕事です」と櫻井常務理事は若い世代に呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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