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AEDによる除細動(電気ショック)の有無による神経学的予後良好の割合
心停止となった人に対しては、救急車到着までに心臓マッサージとともに、自動体外式除細動器(AED)を使うと救命率が大きく上がる。ただし、AEDは素肌に貼るため、倒れたのが女性であることを理由にAEDが使われないケースもある。熊本大学大学院(熊本市)循環器内科の辻田賢一教授と同大学病院医療情報経営企画部の石井正将講師に適切な対処法を聞いた。
◇1分に救命率10%低下
医療機関以外の場所で、心臓の異常が原因で起こる突然の心停止は「心原性院外心停止」と呼ばれる。その数は全国で年間8万人以上。6~7分に1人発生している計算だ。
心原性院外心停止を起こすと、自然に心拍が再開することはほぼない。「心停止から1分経過するごとに救命率、つまり命が助かる確率は約10%ずつ低下します」と辻田教授。通報から救急車到着まで全国平均で約9分かかり、何もしないと助かる可能性は大幅に低下する。一命は取り留めても、脳に後遺症が出てしまうこともある。
このため、周囲の人が人工呼吸や心臓マッサージなどの心肺蘇生術を続け、AEDによる電気ショックも行うことが望まれる。「人工呼吸が難しい場合は心臓マッサージだけでも構いません。それで救命率は2倍、さらにAEDを使えば6倍になるとされます」
◇若年女性の予後は良好
このような救命活動は非常に有効だが、若年女性への実施率が低いと報告されている。
辻田教授らは、心肺蘇生術やAEDを受けた人の割合、30日後に意識や認知力、まひや障害などの神経学的予後を男女別、年齢別に検討した。対象は全国で2005~20年、市民により目撃された心原性院外心停止の患者約35万人。
その結果、15~49歳の患者で心肺蘇生術を受けた人の割合は男性56.8%、女性53.5%、AEDを受けた人は男性7.0%、女性3.8%と、いずれも女性は男性より低かった。神経学的予後が良好だった人の割合は、救命措置を受けた人では受けない人に比べて上昇した。15~49歳の女性ではより良好で、同年代の男性と比べても高かった。
では女性にAEDを使う場合はどうすればよいのか。AEDは電源を入れて2枚のパッドを右胸の上と左のわき腹に直接貼るが、服を完全に脱がさなくても下着をずらして貼れる。貼った後に服を掛けて肌を隠してもよい。「呼び掛けても反応がない場合は心停止と考え、性別にかかわらず心肺蘇生術やAEDをやっていただきたいです」と辻田教授は呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/06/07 05:00)
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