胸痛だけではない
~肩や歯でも狭心症のサイン(東北大学大学院 安田聡教授)~
肩が痛む、歯が痛い―。ありがちな症状だが、危険な心臓病の一つ、狭心症のサインとして表れることも。前胸部の痛みが一般的だが、さまざまな場所に出ることもあり、放散痛または関連痛と呼ばれている。東北大学大学院(仙台市)循環器内科学の安田聡教授に原因や症状について話を聞いた。
痛みの範囲
◇放置すると突然死も
狭心症は、心臓に栄養や酸素を送っている冠動脈の内側が狭くなって血液が流れにくくなり、心筋(心臓の筋肉)が弱る病気。冠動脈が詰まって血流が途絶え、心筋が機能しなくなる病気が心筋梗塞だ。
狭心症は冠動脈が狭くなる原因により、主に二つのタイプに分けられる。一つは、「動脈硬化が進み、動脈の壁にコレステロールや血の塊がたまって狭くなるタイプ。体を動かしたときに症状が出るので労作性狭心症と呼ばれます」。進行すると、安静時にも症状が表れるようになる。
もう一つは、喫煙、飲酒、精神的ストレスなどにより、冠動脈が一時的にけいれんして狭くなる冠れん縮性狭心症。40~50代でも見られ、夜間から早朝の安静時に症状が出る。
「いずれのタイプも、放置すると心筋梗塞など突然死につながる発作を起こす可能性があり、注意が必要です」。心筋梗塞の患者を調べた結果、約半数に狭心症の症状と考えられる前触れがあったとの報告もある。
◇放散痛だけの場合も
安田教授は「心筋梗塞など、突然死につながる心臓発作を防ぐ有効な手だての一つは、狭心症を早期に発見し、適切な治療を受けることです。そのためには症状を理解していただくことが重要です」と語る。
狭心症の典型的な症状は、前胸部の真ん中や少し左寄りの所を中心に締め付けられる、または抑え付けられるような痛みが数分から10分ほど続くが、しばらく休めば治まる。こうした胸痛がなく、放散痛だけの場合もある。放散痛は肩、背中、腕、みぞおち、歯、下顎などに表れる。肩凝りや胸焼けと感じることもある。
「特に高齢の人や肥満、脂質異常症、糖尿病などの動脈硬化の危険因子を持つ人が今までなかったような胸痛や放散痛を感じたときは、医療機関を受診し、心臓に問題がないか専門医に相談するようにしてください」と安田教授は助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/05/09 05:00)
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