治療・予防

片脚起立時間の左右差
~10秒以上でロコモのリスク上昇(浜松医科大学 柴田陽介助教)~

 高齢者の体力測定などで行われる「片脚立ちテスト(片脚起立)」は、ロコモティブシンドローム(ロコモ)のスクリーニングにも使用される。片脚起立時間が短いほどロコモの割合は高くなるが、浜松医科大学(浜松市中央区)健康社会医学講座の柴田陽介助教らが行った研究では、片脚起立時間が長くても左右の脚で一定以上の差がある場合は、ロコモのリスクが上昇することが分かった。

左右差10秒以上でロコモのリスクが上昇

 ◇ロコモを早期発見

 ロコモは、立ったり歩いたりするための身体能力(移動能力)が低下した状態。初期の主な症状は歩行速度の低下で、見過ごしていると、やがて寝たきりや要介護につながる。

 片脚起立はロコモの早期発見に役立つ。片脚立ちで正しい姿勢を保てる時間が長いほど下肢の筋力やバランス能力の評価が高く、ロコモのリスクは低いとされる。一般的には60秒を上限とし、左右の脚の起立時間のうち長い方の記録を採用する。片方の脚の起立時間が上限に達すれば、もう片方の脚の起立時間が短くても「満点」と評価されるが、「運動指導やリハビリの現場では、体に左右差がある場合はその影響や背景を考慮します」。

 そこで柴田助教らは、2017年度に浜松市の高齢者サロンに参加した高齢者を対象に、片脚起立時間の左右差とロコモとの関連を調査。その結果、片脚起立の記録が満点でも、左右差が10秒以上ある場合はロコモの割合が高かった。

 「左右差の背景として考えられるのが、スポーツ歴と日ごろの姿勢です」。テニスなど体の使い方が左右どちらかに偏りやすいスポーツの経験者は左右差が出やすく、また、立ち方、座り方、歩き方など、日々の習慣も影響するという。

 ◇ロコトレの効果

 ロコモの根本にあるのは運動不足。まずは運動の習慣化が必須だ。日本整形外科学会はロコモの治療・予防に有効な運動を「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」と呼んで、片脚立ちとスクワットの2種類の運動を勧めている。左右差があれば、片脚起立時間が短い方の脚により重点を置いてトレーニングを行うとよい。「転倒に注意しながら、できるだけ長く片脚で立てるように頑張りましょう」

 浜松市の協力を得て行った調査では、ロコモと判定された高齢者が3カ月間ロコトレを続けると、約3割の人がロコモから脱却した。「ある程度の筋力やバランス能力が付いたら、次はハイキングや好きなスポーツを楽しむなど、どんどん体を動かしてください」と柴田助教は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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