治療・予防

患部の固定が重要
~慢性足関節不安定症(埼玉県立大学 村田健児准教授)~

 足首の捻挫を起こし、その後に再発しやすくなった状態を慢性足関節不安定症という。埼玉県立大学(埼玉県越谷市)保健医療福祉学部理学療法学科の村田健児准教授らの研究グループは動物実験でその原因を検証し、効果的なリハビリテーションの方法を探っており、予防法などを聞いた。

靭帯が緩み関節が不安定になる

靭帯が緩み関節が不安定になる

 ◇足首の運動機能が低下

 ヒトが歩いたり走ったりできるのは、足の動きを靱帯(じんたい)が感知し、その情報が脳に伝わって、転ばないようにバランスを取る仕組みがあるからだ。

 足関節の捻挫は、多くは足の裏が内側を向くように足首をひねって、外側のくるぶしの周囲で関節を支える前距腓(ぜんきょひ)靭帯や踵腓(しょうひ)靱帯が伸びたり、断裂したりするけがで、関節が不安定になる。損傷の程度によって軽度(前距腓靭帯の部分損傷)、中等度(前距腓靭帯の完全損傷)、重度(前距腓靭帯と踵腓靭帯の完全損傷)に分類される。

 傷ついた靭帯が緩んで関節が不安定になった状態から慢性足関節不安定症を発症し、捻挫を繰り返すうちに足首の慢性痛や関節の変形を来すようになる。「治療やリハビリを受けずに放置すると、さらに重症化し、軟骨の損傷やそれによって炎症を来す変形性足関節症などを引き起こす可能性があります」

 村田准教授らは慢性足関節不安定症を発症させたラットの靭帯を調べ、前距腓靭帯にある足の動きを感知する部分の形が崩れたり、数が減少したりして足首の感覚や運動機能が低下するために捻挫を繰り返しやすくなるメカニズムを解明した。現在、捻挫後の足のぐらつきを抑えて慢性足関節不安定症の発症を防ぐ新たなリハビリの開発を進めているという。

 捻挫を確実に治す

 慢性足関節不安定症の発症を防ぐには捻挫を起こした患部の固定が重要だ。捻挫の応急処置としては安静にして、患部を冷やし、圧迫(固定)して、心臓より高い位置に持ち上げる。痛みが和らいでつい足を動かしてしまうと、関節が不安定になる。

 村田准教授は「捻挫を起こしたら整形外科を受診し、X線や超音波検査で重症度の診断を受け、患部をしっかり固定して確実に治すことが大切です。固定した状態が長く続くと、一時的に足が動かしにくくなりますが、リハビリで回復します。しかし、靭帯が傷つき関節が緩んでしまった足首を健康な状態に戻すことは容易ではありません」と強調する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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