治療・予防

靴ひも結ぶ姿勢で息切れ
~心不全の「ベンドニア」(順天堂大学医学部付属順天堂医院 中出泰輔医師)~

 高齢の心不全患者に見られる前かがみ姿勢での息切れ「ベンドニア」。その頻度や、この症状がない心不全の患者と比較した研究を行った順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)循環器内科の中出泰輔医師に話を聞いた。

前かがみ姿勢で息切れ

 ◇「心不全パンデミック」

 心不全は、高血圧不整脈、心筋梗塞など、心臓、血管のさまざまな病気が原因で生じる。患者数は2030年までに130万人に達し、その8割弱を65歳以上の高齢者が占めると予測され、医療関係者の間で「心不全パンデミック」と呼ばれている。

 入院1年後の死亡率は約20%との報告もある。「心臓の状態が改善して退院しても、入院前にできていたことができなくなったり、活動量が落ちたりすることがあります。そして筋力が落ちてますます活動量が減るという悪循環に陥ります」

 ◇生存期間が短く

 中出医師らのグループは、椅子に座って靴ひもを結ぶように、前かがみの姿勢を保った時に息切れを訴えるベンドニアに着目した。

 ベンドニアは全ての心不全患者に表れるのではなく、生じる理由もよく分かっていない。「心不全の程度によっては、前かがみになると、肺の中の血液が渋滞する『うっ血』が深刻になり、息切れが現れると考えられます」

 中出医師らは頻度、予後などを検討するため、心不全が改善して退院可能となった65歳以上の患者計約1500人を対象に、二つのデータを解析。その結果、ベンドニアを有する患者の割合は約3~4%で、従来報告されている18~49%よりかなり低いことが分かった。さらに、ベンドニアがある患者はない人に比べ、生存期間が短いことも明らかになった。

 ベンドニアに関しては、これまで十分な症例数での検討はされておらず、特に心不全患者の予後との関連は不明だった。今回の研究ではベンドニアの早期発見、早期治療が必要であることが改めて示唆された。「心不全にかかったことがある人が最近、靴を履くときに息切れがするようになった場合は、早めに主治医に相談するとよい」と中出医師は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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