治療・予防

腰痛改善にピラティス
~徳島大病院の取り組み(徳島大学病院 藤谷順三特任准教授)~

 美容や健康のため、国内外で取り組む著名人も多いピラティス。正しい姿勢や動作を獲得しけがを予防するためのエクササイズで、第1次世界大戦中、ドイツ人看護師ジョセフ・H・ピラティス氏が負傷兵の身体機能回復のために考案したのが始まり。徳島大学病院(徳島市)では、2021年に腰痛などの治療やリハビリテーションの一環として導入した。同院整形外科の藤谷順三特任准教授に聞いた。

エクササイズの例

 ◇入院による指導

 人体の関節は、安定性が重要な部分と可動性が重要な部分が交互に配置されているという。腰(腰椎)を例に取ると、腰椎はあまり動かし過ぎず、その上下にある背中(胸椎)や股関節を適切に動かすことで腰への負担が軽減される。胸椎や股関節の適切な動きができなければ、腰椎への負担は増し、腰痛などの原因になりかねない。

 「局所にかかる負担をピラティスにより分散、軽減させることで、全身の動きのバランスが整います」

 徳島大学病院では、21年11月から県内の関連施設(5病院、2大学)と連携し、脊柱管狭窄(きょうさく)症や変形性腰椎症など整形外科関連疾患の患者を対象に、入院によるメディカルピラティスを開始した。

 「整形外科医やリハビリテーション医、理学療法士などが医療に特化したピラティスの専門資格を取得し、50~80歳代の中高齢患者を中心に2~4週間の入院による指導を行ってきました」

 ◇予防効果にも期待

 対象となる入院患者は、毎日午前、午後の2回、40分ずつのピラティスを行う。専門資格を持つ指導者が、呼吸法や関節の動かし方を丁寧に教える。専用器具やマットを使うが、通常のリハビリと異なるのは、「関節の適切な動きを意識して患者本人が積極的に行う点」にあるという。

 「猫背で歯磨き中に立っていることさえ困難だった患者さんや、不安定な背骨をボルトで固定する手術を嫌がっていた患者さんが、ピラティスを行って姿勢が改善したり、歩行が安定したりと成果が出ています」。痛みが軽減した他、体が軽く感じるようになった、気分が明るくなったなど、患者自身も心身への効果を実感しているという。こうした臨床データの集計や論文化はこれからだ。

 「例えば腰痛があれば、医療機関で原因を調べてもらいましょう。その上でリハビリが必要となれば、ピラティスを検討してみてください。将来的な予防効果も期待できると思います」と藤谷特任准教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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