治療・予防

慢性腰痛に有効―エピドラスコピー
~病巣をピンポイントで治療(自治医科大学付属病院麻酔科 五十嵐孝教授)~

 長引く腰痛の治療に、エピドラスコピー(硬膜外腔内視鏡)を用いた手術への関心が高まっている。自治医科大学付属病院(栃木県下野市)麻酔科の五十嵐孝教授は「治療対象は限られますが、薬などでは取れなかった痛みに効果が期待できます」と話す。

エピドラスコピーによる手術は、薬などで改善しにくい慢性腰痛に有効

エピドラスコピーによる手術は、薬などで改善しにくい慢性腰痛に有効

 ▽病巣を確認し治療

 脊椎の病気やけがによって神経が圧迫されると、腰や下肢に痛みが生じ、それが慢性的に続くと日常生活に支障が出る。3カ月以上続く腰の痛みを慢性腰痛と呼ぶ。

 慢性腰痛の受診先はペインクリニックや麻酔科のある医療機関などで、治療は一般的に薬物治療や神経ブロックが行われる。神経ブロックは、痛みが起きている神経に局所麻酔薬などを注射する治療法だが、効果は一時的で、繰り返しても改善しない場合は、手術など他の治療法を検討することになる。

 エピドラスコピーによる手術は、内服薬や神経ブロックで効果が得られない難治性の腰痛に対する治療法で、保険適用外のため自費となる。背骨(仙骨)の硬膜外腔という場所にカテーテルを挿入して、痛みが生じている場所を内視鏡で確認しながら治療する。

 五十嵐教授は「腰痛の検査は通常、レントゲンやMRI(磁気共鳴画像装置)で行われますが、エピドラスコピーはより詳しく病巣の状態を観察することができ、ピンポイントで治療できるのが特徴です」と説明する。

 ▽手術時間30~60分

 エピドラスコピーを使った手術では、神経周囲の癒着部を剥がし、ステロイド薬を注入して炎症を抑えたり、痛みを引き起こす物質を生理食塩水で洗い流したりすることで痛みを抑える。特に腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症、腰椎手術後疼痛(とうつう)症候群に効果があるという。手術時間は30分から60分程度で、手術後数時間で歩行や食事も可能になる。

 「エピドラスコピーによる手術は、慢性腰痛に有効な治療法です。ただし、残念ながら痛みを完全に取り去ることはできません。術後は、内服薬や神経ブロックなどの治療を並行して行うことで、多くは日常生活に支障がなくなるまでに回復するでしょう」と五十嵐教授は語っている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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