治療・予防

要介護になるリスク、高精度で予測
~3種の体力テストで(筑波大学 大藏倫博教授)~

 自治体などが行う高齢者の体力測定会で採用されている3種の体力テストの結果と年齢、性別、体格指数(BMI)をそれぞれ点数化すると、その合計点で、高齢者が要介護となるリスクを高い精度で予測できることが、筑波大学体育系(茨城県つくば市)健康増進学の大藏倫博教授らの研究で分かった。

体力テストなどの合計点と要介護度2以上の認定率

 ◇数値で客観的に評価

 要支援または要介護と認定される人は増え続け、約690万人(2023年3月現在、厚生労働省調べ)と、65歳以上(介護保険被保険者)の約5人に1人に上る。要介護になるリスク(要介護化リスク)が分かれば予防の動機付けになる。

 大藏教授によると、要介護化リスクの評価法として、厚労省が作成した「基本チェックリスト」「要支援・要介護リスク評価尺度」などが使われている。これらの評価法はリスク評価できる点で有用性は高いが、本人が答えるアンケート形式なので、実際には体力が低い人が問題ないと答えることがあり、必ずしも客観性が高いとはいえない。

 ◇41点以上で高リスク

 大藏教授らは、要介護化リスクを評価する尺度を開発した。テストは、開眼片足立ち時間(片足を床から離した状態で立ち続けられる)、タイムドアップアンドゴー(椅子に座った姿勢から立ち上がり、3メートル先で折り返し、再び椅子に座るまで)、5回椅子立ち上がり時間(両腕を胸の前で交差した状態で椅子から立ち上がり、再び座る動作を5回行う)。これらの測定値と年齢、性、BMIを点数化して合わせた点数(0~118点)で評価する。

 対象は、茨城県笠間市の体力測定会に09~19年に参加し、3種の体力テストを受けた65歳以上で介護認定歴のない975人(平均72.8歳)。平均8.6年間追跡したところ、236人(24.2%)が、日常的な動作や食事、排せつなどで部分的な介助を必要とする要介護度2以上と認定された。

 「認定を予測する精度は良好でした。合計点数が高い人ほど要介護度2以上と認定される確率が高く、特に41点以上の高齢者では要介護化リスクが高いと推定できました」と大藏教授。「今後各地の自治体などに取り入れられることで、多くの高齢者の介護予防の動機付けや現状評価に役立ててもらえたら」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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