治療・予防

チェックリストで早期発見
~オーラルフレイル(東京歯科大学 上田貴之教授)~

 口腔(こうくう)機能の健康な状態と、加齢などに伴い衰えた状態の中間を「オーラルフレイル」と呼ぶ。歯科が対応するものと思われてきたが、全身状態を悪化させる可能性も明らかになってきた。

 今年4月には歯科系の日本老年歯科医学会と医科系の日本老年医学会、日本サルコペニア・フレイル学会が、オーラルフレイルの定義などを明確化した「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」を発表した。ステートメント策定に関わった東京歯科大学(東京都千代田区)老年歯科補綴(ほてつ)学講座の上田貴之主任教授に聞いた。

チェックリスト「OF―5」

チェックリスト「OF―5」

 ◇まずは自己チェック

 ステートメントには、自分がオーラルフレイルかどうかを簡単に判定できる5項目のチェックリスト「ОF―5」が盛り込まれている。〔1〕入れ歯などを除いた自分の歯が19本以下〔2〕半年前と比べて硬いものが食べにくい〔3〕お茶や汁物などでむせることがある〔4〕口の渇きが気になる〔5〕普段の会話で言葉をはっきりと発音できないことがある―の五つのうち二つ以上に該当すれば「オーラルフレイル」と判定される。

 「セルフチェックによって、歯の残存数の他、無意識に柔らかいものを選んで食べていないか、口の周りの筋力の低下によってかむ力や唾液の分泌量が減っていないかなど、自分の口腔機能に関心を持つことが重要です」

 5番目の項目に当てはまる人は、人と話すのがおっくうになり、家に閉じこもりがちになるリスクが高い。「将来の要介護や死亡リスクの上昇につながる社会的孤立を予防する意味でも、早めの対策が大切です」

 ◇具材は大きめに

 オーラルフレイルの時点で気付けば、日常生活の改善によって口腔機能を楽に維持できるという。「セルフチェックの結果が悪くても悲観せずに。早めの対策とその継続ができるチャンスです。気になることはかかりつけの歯科医や医師に相談してほしい」

 自分でできる対策としては▽朝晩ガムを1枚ずつかむ▽歯応えのあるものを毎食1品加える▽具材は小さく刻まず少し大きめに切ってゆっくりかみ、口の筋肉を動かす運動を意識して行う―と、口腔機能低下の予防につながる。

 「50歳代以降は半年ごとにOF―5でチェックし、かめる喜びを感じながら健康長寿を目指しましょう」と上田教授は助言している。

 なお、OF―5は、医科の診療や介護の現場でも活用されることを想定している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

【関連記事】


新着トピックス