在宅医療、コロナ禍で急増
~地域の支援体制が課題(東京慈恵会医科大学 青木拓也准教授)~
新型コロナウイルス感染症流行下で、各医療機関の診療体制が逼迫(ひっぱく)し、患者の入院が非常に厳しくなった。そのために増えた自宅療養者を支えたのが在宅医療だ。当時の状況と課題、今後について、東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部(東京都港区)の青木拓也准教授に聞いた。

在宅での医療
◇自宅での終末期医療が増加
在宅医療には訪問診療と往診がある。計画的に患者宅を訪問して診療を行う「訪問診療」に対し、患者や家族からの急な要請に応じて自宅を訪問し、診療を行うのが「往診」だ。
青木准教授らは、個人のレセプト(診療報酬明細書)や特定健診情報を集計した厚生労働省のデータベース「NDB」に基づき、パンデミックが在宅医療に与えた影響を調査した。その結果、緊急事態宣言が出された2020年4月以降、往診が増え、ターミナルケア(終末期医療)の利用回数や自宅でのみとりが急増したことが分かった。
「往診の増加は、入院の受け入れ先がない患者の診療ニーズが増えたことが要因。ターミナルケアの大幅な増加は、入院ベッドの不足に加え、介護施設でも面会が制限されたためとみられます」
◇多死社会の到来で
コロナ下での在宅医療で利用が急増したのが、「機能強化型在宅療養支援診療所」や「在宅療養支援病院」だ。これらは24時間対応で緊急の往診・入院、訪問看護、連携する医療機関への情報提供などを行う。ただし、青木准教授は「その機能を持つ医療機関の数や質に地域差があるのが現状」と指摘する。
高齢化の進展で死亡数が増加し、人口減少が加速する「多死社会」が数年以内に到来すると予想されるが、病院や地域の入院ベッド数は減少している。
これに対応するためには不足する医療資源を確保することが重要だ。「在宅医療を担う医療機関を地域全体でどのようにサポートしていくかが今後の課題です」と青木准教授は語る。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/02/14 05:00)
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