高齢者の「誤薬」
~飲み忘れ、飲み間違い、薬剤師に相談を(薬剤師 雜賀匡史さん)~
多くの病気を抱え、いろんな薬を処方される傾向にある高齢者では、飲み忘れや飲み間違いなどの「誤薬」が課題となる。医療や介護の総合支援サービスを手掛ける、さいがケアファルマ合同会社(千葉市花見川区)代表で薬剤師の雜賀匡史さんは「処方薬のことで医師に言い出しにくい場合は、薬剤師に気軽に相談してほしい」と話している。

お薬カレンダーなど複数の方法で対策を
◇命に関わるケースも
複数の病気に対し、さまざまな医療機関で処方される多くの種類の薬を患者一人で管理するのは難しく、一歩間違えれば命取りになりかねない。「例えば、心臓や脳血管に関わる病気の薬などを飲み忘れたり飲み間違えたりすれば、発作や血栓、脳卒中などのリスクにつながりかねません」
長年にわたり服薬の習慣がある人であれば高齢になっても問題は比較的少ないというが、高齢になってからや、認知機能が低下してから服薬を始めた人は特に注意が必要だ。あるいは、自覚症状がない病気では、患者本人の独断で服薬をやめてしまうケースもあるという。
さらに、患者本人による誤薬だけでなく、家族などが勘違いして使用してしまう場合もある。「誤薬の自覚がないため、体調を崩してもそれが誤薬のせいと気付かないかもしれません」
◇複数の方法で対策を
誤薬を防ぐ手段として、「お薬(服薬)カレンダー」がある。その名の通り、曜日やタイミングごとに飲む薬をポケットに入れるカレンダーで、さまざまな種類が市販されている。「本人や家族などの介護者が管理できればお薦めです。ただし、日時や曜日などが分からなくなる見当識障害をお持ちの方は、誤薬のリスクが伴います」。実際、雜賀さんが担当する高齢患者でも、1週間分の薬を一度に飲んでしまったケースがあるという。
そこで、雜賀さんは処方薬そのものの見直しを提案する。例えば、朝昼夕の1日3回飲む薬を服薬負担の少ない1日1回の薬に変更する。「処方提案といって、その患者さんの生活リズムに則した服薬情報を医師に伝え、処方薬の変更などを提案します」
介護サービスを受けている高齢患者でも、1日1回処方であれば介護者が服薬に立ち会いやすい。また、同じタイミングで飲む複数の種類の薬を一つの袋にまとめる「一包化調剤」という方法もある。いずれにしても、複数の方法を組み合わせ、一人一人オーダーメードで服薬方法を検討することが得策だ。
「誤薬に気付いたら、すぐに医療機関か薬局などに連絡してください。また、医師の処方通りの服薬が難しいと感じたときは、遠慮せず薬剤師に相談してみてください」と雜賀さんはアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/03/10 05:00)
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