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妊婦の胎盤と胎児をつなぐへその緒(臍帯=さいたい)に含まれる血液は、胎児側の胎盤とともに赤血球や白血球など血液細胞を生み出す造血幹細胞が多く含まれ、白血病などの治療に活用されている。しかし一方で、「すべての細胞の基になる細胞を多く含みがん医療の切り札になる」とか「細胞を再生させることで若返り(アンチエイジング)に有効」などといった誤ったイメージが流布され、安全性も確認せずに患者に投与した医療機関が警察に摘発されるケースもある。実際の医療現場では臍帯血がどう使われているか、東京慈恵会医科大付属病院腫瘍・血液内科の矢野真吾教授に聞いた。
◇難治性血液疾患の治療に
「臍帯血には赤血球や白血球を造る造血幹細胞が多く含まれているため、造血器悪性疾患の急性白血病や悪性リンパ腫、造血幹細胞の数が著しく低下する再生不良性貧血など難治性の血液疾患の治療手段として使っている」
これら難治性血液疾患の治療には兄弟姉妹らの血縁者や骨髄バンクに登録されているドナーからの 造血幹細胞移植が最も有効だが、HLAと呼ばれる白血球の型が一致しない場合は免疫反応 (移植片対宿主病=GVHD)が起きてしまう。その点、臍帯血はHLAが完全に適合する必要はなく、また血縁者や骨髄バンクドナーからの移植と異なり、ドナーの都合を考慮せず、患者の状態だけを診て移植の日程を調整できるというメリットがある。
ただ、胎盤から生じる臍帯血の量に制約があるため、一定以上の体重の患者には投与できない。さらに、投与後に造血機能が回復しない「生着不全」という現象が起きる確率が10%ほどあり、また術後の感染症の発症率が高くなる傾向が見られるという問題もある。それでも矢野教授は「HLAが一致した血縁者や骨髄バンクドナーからの移植が第一選択であることは確かだが、臍帯血が使えることで治療の選択肢が大きく広がった」と評価する。特に造血幹細胞移植後に病気が再発した場合、患者の病状に合わせて移植が行えることが臍帯血の強みで、臍帯血が使えなかった時代は移植のタイミングが合わず治療をあきらめざるを得なかったケースでも、移植後6カ月以上経過してからの再発で元の病気の病状のコントロールがついていれば臍帯血移植という次の一手が打てる、と言う。
(2017/10/06 17:19)
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