特集

副反応との関連「不明」
子宮頸がんワクチンでフォーラム―医師会・医学会

 年間約1万人が罹患(りかん)し、約2900人が死亡する子宮頸(けい)がん。原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチンの副反応が問題視され接種率が低下する中、「HPVワクチンについて考える」をテーマにした、日本医師会と日本医学会の合同フォーラムが10月中旬、東京都内で開かれた。登壇した医療関係者は持続的痛みや運動機能障害などの副反応症状とワクチンとの因果関係は「不明」とする一方、海外での実績などを基にワクチンの有効性を強調した。ただ、「原因はワクチン」との不安が払拭(ふっしょく)されない限り、接種率の向上を疑問視する声もある。

 ◇健康被害者が提訴

接種の積極的推奨は中止されている

 HPVワクチンは、2013年度に対象者全員が無料で受けられる定期接種化された。しかし、接種後に異常を訴えるケースが相次ぎ、厚生労働省は「積極的な接種推奨の中止」を各自治体に通達した。一方、健康被害を受けた女性とその家族は16年、「症状はワクチンの副反応だ」として国とワクチンを製造・販売している製薬会社2社を相手取り提訴。現在、全国4地裁で係争中だ。

 ◇海外は高い摂取率

 フォーラムで、横浜市立大学医学部産婦人科主任教授の宮城悦子氏は「高い検診率と接種率の両立が必要だ」と強調。18年5月、世界保健機関(WHO)の事務局長が「子宮頸がんを撲滅すべきだ」というメッセージを発したことを紹介し、「ルワンダやブータンといった途上国ではワクチン接種率が90%を超えている。先進各国も国の施策として撲滅に向かっている」とし、「市民やメディア、行政にワクチンの効果と安全性を伝えていくことが最大の課題だ」と訴えた。

 シャロン・ハンリー北海道大学大学院産婦人科学教室特認講師はワクチンをめぐる世界の状況について説明。「15年に接種率が減少したデンマークでは保健局や対がん協会などが『ストップHPV』というキャンペーンを展開し、18年8月には77%に増加した。アイルランドも接種率が16年に50%にまで下がったが、さまざまな団体が取り組みとメデイアの姿勢の変化により現在は70%に復活した」と述べた。

日本医師会と日本医学会の合同フォーラム

 新潟大学大学院産婦人科学教授の榎本隆之氏は、「米国やオーストラリアが接種プロジェクトを実施し、プロジェクト開始前に接種しなかった人たちのキャッチアップもしている。その結果、感染率が減少し、イングランド(英国)でも、接種の導入後にHPV関連の湿潤がん(進行がん)が減っている」と述べ、「海外でワクチンの効果が示されている」と指摘した。

 ◇接種なくても同様の症状

 HPVワクチンの有効性と安全性に関する厚生労働省研究班の代表者を務めた大阪大学大学院医学系研究科環境医学教授の祖父江友孝氏は、研究班が16年の1月から2月にかけて実施した全国疫学調査について説明した。対象となったのは、大学病院や200以上の病床を有する医療機関などの1万8000診療科だ。痛みや感覚障害などの症状が少なくとも一つはあり、それが3カ月以上続き、就学や就労が困難な患者について調べた結果として「接種歴がない人でも、接種後に報告される多様な症状を有する人が一定程度存在した」と述べた。

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