子宮頸がん〔しきゅうけいがん〕 家庭の医学

 子宮は、妊娠中に赤ちゃん(胎児)を育てるための臓器で、腟(ちつ)側で入り口の部分にあたる「頸(けい)部」と、奥にある「体(たい)部」とに分けられます(女性性器の構造)。頸部にも体部にも、がんは発生しますが、子宮頸がんと子宮体がんではがんの発生のしかたなど異なる点が多く、まったく別々のがんとして扱われます。子宮体がんが50歳代以降の閉経後の女性に多いのに対して、子宮頸がんは30歳代をピークとして若年女性に多くみられる病気です。
 子宮がん検診の普及に加え、世界的には子宮頸がんワクチン(HPVワクチン:HPV感染症を防ぐワクチン)が普及しています。ワクチン導入ずみの先進国では、今後子宮頸がんが減少していくと考えられています。しかしながら、発展途上国では依然として子宮頸がんによる死亡は多く、世界全体では女性のがん死の第4位を占めます。日本では、子宮頸がんの検診率が先進国のなかでは低く、発症者も近年は若年化が進み、死亡者数・罹患者数ともむしろ増加傾向がみられます。また、HPVワクチンの接種勧奨は2013年以降差し控えられていたため、ワクチン未接種による影響が懸念されています。しかし2021年11月に、専門家により「HPVワクチンの積極的勧奨を差し控えている状態を終了させることが妥当」と評価されたため、厚生労働省は2022年4月から、他の疾患の定期接種と同様に、個別の勧奨をおこなうように各自治体に通知しました。くわしくはお住まいの自治体に確認してください。

[原因]
 子宮頸がんの90%以上で、ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus:HPV)の感染が誘因と考えられています。性交歴のある女性では、誰もがこのウイルスに感染するリスクがあります。多くの場合は、なにも治療をしないでも感染が自然におさまってしまうのですが、一部の女性ではウイルス感染が持続状態となり、通常数年~20年の年月を経て徐々に子宮頸がんを発生すると考えられています。
 つまり、感染者のごく一部だけが持続感染になり、さらにそのうちのごく一部の人だけが発がんすると考えられています。しかしながら、どういう人が持続感染になるのか、持続感染者のなかでどういう人が発がんするのかはまだ解明されていません。喫煙やクラミジア感染、低用量避妊薬の服用、妊娠出産が影響するのではないかという報告もあります。性交年齢の若年化が頸がん発生の若年化と関連していると考えられます。前述のように、ウイルスに感染すれば、必ずがんになるわけではありません。アメリカでは女子学生の約40%にHPV感染が見つかったという報告もあり、感染既往率は実際には非常に高いです。いわゆる、性病(梅毒や淋病〈りんびょう〉など)と同等に扱われるべきものではないといえます。

[症状]
 不正性器出血が最初によくみられる症状ですが、初期の段階では出血を伴わないことも少なくありません。その点は検診が重要な理由の一つでもあります。かなり進行してはじめて不正出血が自覚される場合もあります。がんの進行に伴い、出血はより頻繁にあるいは持続的になり、悪臭を伴う汚い帯下(たいげ:おりもの)が出てくるようになります。
 接触出血(性交後の出血)も含めて、月経以外に出血がある場合は婦人科医の診察を受けるようにしましょう。

[診断]
 一般におこなわれている子宮がん検診は子宮頸がんを調べるための細胞診です。子宮頸部の表面をブラシやヘラなどでこすって、くっついてくる細胞を染色して顕微鏡で調べます。それほど強い痛みを伴わない検査ですので、若年からの定期的な検診(2年に1回など)が推奨されています。
 細胞診の結果は現在ベセスダシステムが普及しています。国際分類であるベセスダシステムでは(詳細は省きますが)、異形成の程度が軽い(軽度異形成)と考えられるものをLSIL、異形成の程度が強いものをHSIL(中等度から高度異形成、上皮内がんを含む)と呼ぶようになっています。

●ベセスダシステム分類
NILM正常な細胞のみ
ASC-US異形成といいきれないけれど細胞に変化がある
ASC-H高度な細胞異型の可能性がある
LSIL HPV感染や軽度異形成と考えられる
HSIL中等度異形成・高度異形成・上皮内がんと考えられる
SCCあきらかな扁平上皮がんと考えられる
AGC異型腺細胞で上皮内腺がんまたは腺がんが疑われる
AIS上皮内腺がんと考えられる
Adenocarcinomaあきらかな腺がんと考えられる


 ポイントとして、ほとんどの子宮頸がんには前がん病変(異形成)が存在すること、異形成は軽度病変から段階を追って病状が進行すると考えられていること、定期的に子宮がん検診を受けてなるべく早期に異常を発見することが重要であるなどがあげられます。
 細胞診で異常がみとめられた場合は、子宮頸部組織診などの精密検査が必要になります。子宮がん検診異常の多くは子宮頸部異形成の段階で見つかることが多いのですが、ほんとうに病変があるのか、病変があるとしたらどの段階にあるのか、治療を要する病変がないかをよく確認することが大事です。
 子宮頸部組織診は、通常コルポスコープと呼ばれる拡大鏡を使っておこなわれます。子宮頸部を拡大してのぞきながら、染色液(酢酸)を使って見やすくしてから病変のあるところからほんのごく一部の組織を採取します(生検鉗子〈かんし〉で組織をつまみとる)。これを顕微鏡で調べることで、細胞診より精度の高い診断が可能になります。検査の結果が出るのには、約1~2週間必要です。妊娠中でもこの検査を受けることはできます。
 以上の検査で、子宮頸がんであると診断された場合は、次にがんのひろがりを調べる検査が必要になります。子宮を支えている靱帯(じんたい:基靱帯)や腟に沿ってがんが進行することもありますので、内診(腟内や直腸内から指を挿入して診察すること)をします。リンパ節や肝臓などへの転移を調べるためには、CT(コンピュータ断層撮影)検査やPET/CT検査をおこないます。MRI(磁気共鳴画像法)検査は、子宮頸部周囲のがんのひろがりを調べるために有用な画像検査です。子宮頸部は膀胱(ぼうこう)や直腸と接しているため、進行すると、がんが子宮頸部を越えて膀胱や直腸に進展することがあります。膀胱や直腸へのがんのひろがりを見るために膀胱鏡や直腸鏡を使って膀胱や直腸の内側から検査することがあります。
 がんのひろがりにもとづいて、進行期が決定されます。FIGO2018という国際進行期分類が2020年末から用いられています。おおまかに説明すると、がんが子宮頸部にとどまっているとⅠ期、子宮のまわりの靱帯や腟にひろがり始めるとⅡ期、さらに進んで靱帯や腟に沿ってひろがったがんが骨盤壁や腟の下、3分の1まで達している場合はⅢ期、膀胱や直腸へひろがっている場合や肝臓などへの転移がみられる場合はⅣ期になります。

[治療]
□子宮頸部異形成や上皮内がん
 前がん病変である子宮頸部異形成(特に軽度異形成)では、なにも治療をしないで自然消失する可能性が高く経過観察となることが多いのですが、一部の人では異形成の程度が進行するため、進行していないことを確認するために定期的な診察・検査が不可欠です。長期に病変が消失しない場合や進行してくる場合、また子宮頸部異形成のうちで異形の程度が高いものでは、レーザー蒸散治療(病変を焼ききる)や子宮頸部円錐(えんすい)切除という、腟側からのぞいて子宮頸部を円錐状に切り取る小手術が必要になってきます。治療をおこなうかどうかの判断や診察間隔を決めるために、どの型のHPVが感染しているかを調べるジェノタイプ判定検査をおこなうことがあります。
 子宮頸部上皮内がんでは通常、子宮頸部円錐切除術がおこなわれますが、上皮内腺がんや高齢者の場合、単純子宮全摘術(子宮筋腫などに対してもおこなわれるいちばん簡単な子宮全摘の方法)も治療法の一つとなります。

□進行期Ⅰ・Ⅱ期
 Ⅰ・Ⅱ期で手術が選択される場合には、広汎子宮全摘術が基本になります。この手術は子宮だけでなく、一般的に卵巣・卵管、子宮を支えている子宮周囲の組織、リンパ節などをすべて取り除く手術で、婦人科手術のなかでもっとも大きな手術の一つです。年齢や病状によって、卵巣が温存できることがあります。手術は従来の開腹手術でおこなわれることが多いですが、病状によっては腹腔(ふくくう)鏡手術やロボット支援下(腹腔鏡)手術などの低侵襲手術によりおこなわれることがあります。手術後には排尿障害やリンパ嚢胞(のうほう)・リンパ浮腫などを生じることがあります。また、摘出物の病理検査結果により、術後に放射線治療や抗がん薬治療、もしくはその両方を追加することもあります。腫瘍サイズが大きい、子宮のまわりの組織にもひろがっている、手術の負担に耐えられないような合併症がある、高齢であるなどの場合、放射線治療と抗がん薬治療を同時におこなう同時化学放射線療法も広くおこなわれています。なお将来の妊娠・出産を希望する場合、いくつかの条件(腫瘍の大きさが2cm以下でリンパ節転移が疑われないなど)を満たせば、子宮体部や卵巣・卵管を温存する手術療法として、広汎子宮頸部摘出術がおこなわれることもあります。しかしながら、術後は不妊治療が必要になったり、妊娠しても早産になったりすることが知られています。

□進行期Ⅲ期以上
 Ⅲ期以上では、放射線治療(可能であれば同時化学放射線療法)が基本です。遠く離れた線源から下腹部を照射する方法(外照射)と、小線源を腟や子宮の内部に入れて内側から照射する方法(腔内照射)を組み合わせておこないます。ただし、放射線照射範囲を越える病変が多い場合には、抗がん薬治療が選択されることもしばしばあります。
 
 医師はこれらの治療法のなかから病状や年齢、持病の有無などを考慮し、もっとも適したものを選んで治療します。それぞれの治療法の長所短所を医師にたずね、自分にもっともふさわしい治療法を相談しながら決めて治療に臨むことが大切です。

[予防]
 HPVワクチンは、日本の子宮頸がんで約6割を占める2つの型(HPV-16、18型)の感染を予防する効果があります。また、良性腫瘍であるコンジローマの原因となるHPV-6、11型の感染を予防するものもありますし、2021年には9つの型を予防するものも使用できるようになりました。
 HPVワクチンは小学校6年生から高等学校1年生相当の女子を対象に定期接種がおこなわれています。1997(平成9)年度~2006(平成18)年度生まれまで(誕生日が1997年4月2日~2007年4月1日)の女性で、HPVワクチンの定期接種の対象年齢のときに接種をしなかった人にも、あらためてHPVワクチン接種の機会が提供されています(2023年10月時点)。該当される方は、厚生労働省やお住まいの自治体のウェブサイトで詳細をご確認ください。

(執筆・監修:東京都立駒込病院 緩和ケア科 医長 鶴賀 哲史)
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