特集

副反応との関連「不明」
子宮頸がんワクチンでフォーラム―医師会・医学会

 ◇できる限りの治療

 愛知医科大学学際的痛みセンター教授の牛田享宏教授によると、接種後に痛みを訴え同センターを受診した患者は20歳以下の年齢層が多く、症状は多い方から頭痛、下肢痛、上肢痛と続く。牛田氏は「症状との因果関係が不明であっても、できる治療をやる」と説明。痛みによる患者の恐怖を和らげ、スローな筋肉トレーニングなどを行っている。ワクチンを2回接種した女子中学生は頭痛と全身の倦怠(けんたい)感で学校に通うことができなくなった。しかし、信頼関係を築いた上で少しずつ運動させるなど活動性の向上を図り、治療開始から5カ月後には高校を受験できるようになったという。

 ◇小児科医も参加を

 JR東京総合病院前副院長の奥山伸彦氏も「HPVワクチンが原因かどうかは肯定も否定もできない」との見解を表明した。奥山氏らは痛みの消去を目指すのではなく、症状の悪化を防ぐ「認知行動療法」に取り組み、同療法によるエビデンス(医学的証拠)の蓄積を目指す。「HPVワクチン接種後に生じた症状の診療に応じる医療機関は85施設あるが、小児科があるのは10施設にとどまる」と問題点として挙げた上で、「小児科医が積極的に参加してほしい」と求めた。

 ◇メディアの姿勢批判

東京地裁前で集会を開く訴訟の原告ら
 日本小児科医会業務執行理事の及川馨氏は「予防接種の目的は自分と集団を守り、社会的弱者を守ることにある。接収を受けた場合の恩恵とリスクを比較できない人が増えている」とHPVワクチン接種率の低下に疑問を呈し、「発熱などの副反応はあるが、重篤な症状を招くことはまれだ。大半のワクチンは安全だ」と語った。

 及川氏は「米国では長年の議論の末、一定の条件を満たせば、因果関係を証明しなくても救済する『無過失補償・免責制度』が導入された。日本ではこれが十分に整備されていない」と指摘。さらに「報道によるネガティブキャンペーンが『ワクチンは怖い』という印象を与えた」と述べ、メディアの姿勢を批判した。

 ◇訴訟弁護団は抗議

 HPV薬害訴訟全国弁護団はフォーラム開催の直前、開催に抗議する「意見」を発表した。「意見」は、フォーラムの発表者に接種後の症状がHPVワクチンによる副反応であるとの立場の医師が一人も含まれておらず、接種推進の立場を取ってきた医師らのみになっていることを問題視。「HPVワクチンによる副反応との立場を取るにせよ、機能性身体障害であるとの立場を取るにせよ、接種後の副反応症状の発生を効果的に防止する方策は見つかっていない。このような状況で、『積極的接種勧奨』の再開を推し進めようとするのはあまりにも無責任であり、強く抗議する」としている。(時事通信社・鈴木豊)

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