研究・論文

新薬開発進む全身性強皮症
早期発見で進行抑制可能に

 強皮症、全身性硬化症とも呼ばれる全身性強皮症は膠原(こうげん)病の一種で、皮膚が厚く(硬く)なる変化が主症状。心臓や肺、腎臓、消化管など全身の臓器も硬くなる(硬化)。根本的な治療法がないため、国の指定難病となっている。日本医科大学付属病院(東京都文京区)リウマチ・膠原病内科の桑名正隆部長は「病態の解明が徐々に進み、複数の治療薬の開発も行われており、近い将来、治療の変革が期待できます」と話す。

身性強皮症の初発症状。写真はレイノー現象で白くなった指

 ▽レイノー現象に注目

 全身性強皮症は、遺伝的な体質と環境因子が複合的に関係して発症すると考えられている。患者は、男性に比べ女性が圧倒的に多い。桑名部長は「初期症状として、手指が蒼白(そうはく)、紫色と変化して赤みが戻るレイノー現象という血行障害が見られます」と説明する。その他、指先のむくみやこわばり、関節の痛みや疲れやすさで始まる例もある。

 レイノー現象は、寒冷刺激や精神的緊張によって起こる手指などの皮膚の色調変化で、数分から30分程度しか見られない。桑名教授は「患者さんがスマートフォンなどで撮影し、受診時に医師に見せれば、その確認が容易にできます。指が腫れて横しわが見えなくなったり、指輪が抜けなくなるケースもあります。こうした初期症状を見逃さないことが大切です」と注意を促す。

 この病気は、軽症で進行しないタイプ、進行が早く硬化が全身や内臓に広がるタイプなど、症状や経過が多彩である。桑名部長は「問題は、内臓が障害を起こす場合です。肺の硬化が進むと呼吸不全、心臓が硬化すると心不全を起こし、命を落とす原因にもなり得ます」と話す。

 ▽進む治療薬の開発

 治療は、血流の改善を目指して血管拡張薬を用いるのが基本だ。皮膚や内臓で硬化が進行した場合には、免疫抑制薬やステロイドなどで治療を行うが、十分な効果は見込めず、副作用の多い点も問題となっている。

 そんな中、現在、国内で4種類の治療薬(トシリズマブ、ニンテダニブ、ラナバサム、リオシグアト)の臨床試験が進められている。病気を引き起こす因子を選択的に阻害する作用を持ち、副作用が少ない点が特徴だ。桑名部長は「これらの薬は根治療法にはなり得ませんが、病気の進行を抑えることが期待できます。早期に受診し、治療を開始することが鍵を握ります」と強調する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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